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第291回定例講習会

日時:平成30年6月3日(日) 午前10時30分~午後4時

会場:名古屋市立大学病棟・中央診療棟3F大ホール

内容

藤井 徹 先生
藤井 徹 先生

1)糖尿病の基礎と臨床 (公社)全日本鍼灸学会認定指定研修C講座

社会医療法人八千代病院 内分泌代謝内科部長  藤井 徹 先生

前回「糖尿病とは」のご講義の中で、食生活が変わり生活にゆとりが出て、メタボリックドミノにより糖尿病が増えてきたことを再度スライドで示していただきました。今回は、糖尿病の合併症の総論と治療について、糖尿病の合併症がなぜ怖いのか、進行するとどうなるのかをスライドでわかりやすく説明をしていただきました。

糖尿病は一度発症すると治癒しない(不可塑性)、全身で同時に進行し、複数の合併症が同時に発症する(同時発症)、高血圧、高脂血症、加齢で加速するので、医療機関を受診し対処をしないと、これらが原因で太い血管の障害で脳梗塞、心筋梗塞を発症させ、細い血管では神経障害、腎症、網膜症を発症させ、命に係わることをカラースライドで詳しく教えていただきました。

まとめとして、糖尿病合併症進展抑制のために1)血糖コントロール2)脂質異常症3)血圧管理4)体重コントロール5)尿酸コントロールの管理を厳重にすることが重要であることを教えていただきました。

 

 

山田 篤 先生
山田 篤 先生

2)生活習慣病の基礎・臨床、診断と治療

(公社)生体制御学会研究部生活習慣病班班長 山田 篤 先生

2016年の国民健康・栄養調査で、日本では糖尿病の疑いがある人数は増加しているが、糖尿病の可能性が否定できない人数は減少していると報告をしていただきました。世界各地で糖尿病の患者数が増加している理由として、特に発展途上国などの国では、生活環境や糖尿病の正確な情報が伝わっていないことなどがあげられ、さらに日本が糖尿病の患者が増え続けている理由として、人口の高齢化と生活習慣の変化が一番の原因と教えていただきました。

とくに高齢者の糖尿病患者が合併症を起こさないようにHbA1cコントロール目標は患者自身の特徴(健康状態)から3つのカテゴリーに分けて低血糖を起こさないように薬物服用の有無も含めて7%未満、8%未満を目標にしていることも教えていただきました。

 糖尿病の臨床においては臨床診断のフローチャートをスライドで示していただき、診断の手順から疑いがあれば、検査の回数を増やし確定診断を受けることがまず一番大事であること、次に高い血糖値を下げることと良好な血糖コントロールを目的に治療を受けることが合併症を防ぐことに繋がることを教えていただきました。

 

加賀敏朗 先生
加賀敏朗 先生

3)生活習慣病に対する症例報告及び症例検討

 「高血圧と経絡治療」

経絡治療学会東海支部支部長 加賀 敏朗 先生

経絡治療とは、全ての疾患を経絡の虚実状態として把握して、それを主体に鍼灸治療を用いて補瀉し、治癒に導く伝統医術であり、証にしたがった随証療法を用いることを分かりやすく説明していただきました。

経絡治療の基本の証は肝、脾、肺、腎虚証に分かれ、それぞれに寒証、熱証があることを教えていただきました。治療に関しては、病気の根幹部分を治療する本治法と病気の症状として出現している部分を治療する標治法があり分かりやすいスライドで説明していただきました。

最後は今回のテーマである生活習慣病の1つである高血圧の症例を報告していただきました。高血圧の証は腎虚熱証が一番多く、スライドで診断(望、聞、問、切診)の状態を示していただき、治療ポイントや治療経過を分かりやすく説明していただきました。

早川和浩 先生
早川和浩 先生

4)鍼灸学校学生向け企画

スポーツ傷害に対する鍼治療

「スポーツ傷害に用いる基本手技」

早川治療院  院長 早川和浩 先生

前回の復習でスポーツ外傷とスポーツ障害の違いについてのお話のあと、今回のテーマの鍼治療について、スポーツ傷害の患者には、まず時間があれば必ずレントゲン検査で骨に異常がないかの診断をつけてもらうことが大事で、それから鍼治療を開始する。急性期でも鍼治療は効果がある。

効果を出すには、治療ポイントとして圧痛点を中心に、そして施術者の触診の経験と解剖学的(筋肉の位置など)な知識が必要条件となることを教えていただきました。

鍼施術の効果は、痛みに関しては早く治る、鎮痛薬より効果が早く治るのも早い、腫れや炎症に関しては、鍼刺激により血管の拡張が起こり血流の改善により白血球数の増加が免疫機能に関与して改善を促すことが報告されていることを教えていただきました。

今後、スポーツ鍼施術を実践する前に、解剖や触診のテキストを用意して知識を得ておくこと、物療(電気刺激装置)を準備する、整形外科医をはじめとする専門家との連携が重要であること、鍼治療は痛いところに刺激を加える、損傷部位に鍼先を正確に届かせる、痛みが発現する姿勢を再現させて痛いところに鍼刺激をする、押手は通常よりしっかり強めに行う、痛みが出現する部位に連続して鍼治療を行う、鍼治療の手技として単刺、直刺、送り込み、雀琢ができる技術を磨くことが必要であると教えていただきました。