令和7年度第6回(326回)Web講習会

日時:令和8年3月1日(日) AM8:30~PM12:10

会場:Zoomによるオンライン会場

内容

秋田壽紀先生
秋田壽紀先生

1)AM8:30~10:00

 睡眠と鍼治療

 東洋医学研究所®グループことぶき鍼灸院 秋田壽紀 先生 

 

 今回の講義では不眠症について、不眠症の基礎知識と不眠症に対する鍼治療の研究に加えて、睡眠障害と鍼治療ついても分かりやすくお話していただきました。

 国際睡眠障害分類では、睡眠障害は6つの分類に分けられ、その分類の1つに不眠症が当てはまる。

 睡眠は覚醒状態と睡眠状態を神経伝達物質のバランスによって切り替わっている。切り替わる原動力として概日リズムや恒常性によって切り替えられ、恒常性は軽度の運動によって保たれる。睡眠状態はGABAを中心にアセチルコリンが関与しており、覚醒状態はオレキシンやヒスタミンなどの神経伝達物質が関わっている。

 不眠症の原因は概日リズムや恒常性に加えて、睡眠環境、睡眠関連疾患、身体疾患、精神疾患など多岐にわたる。

不眠症の疫学は日本では成人約20%にみられ、女性優位の傾向がある。その中でも3ヶ月以上持続し、日中機能障害ある【慢性不眠症】は成人の10-20%を占め、睡眠障害全体の85%にものぼる。

 鍼灸院における不眠症患者の実態調査と題して、5年間の健康チェック表を用いた調査によると、全患者が3271名のうち【32.寝つきが悪く、眠っても目を覚ましやすい】にチェックが入っている490名を不眠症群とし、不眠症群は15%で、男女比は女性のほうが多く、不定愁訴指数では不眠症群の方が6点程度高い数値となった。

 不眠症の治療方法として、睡眠衛生指導、オレキシン系を中心とした薬物療法、認知行動療法があげられる。

 鍼治療がオレキシンやGABAへの影響を調査した研究もあり、今後の鍼灸の可能性を示唆されました。

 

 

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岩瀬 敏 先生
岩瀬 敏 先生

1)AM10:00~11:00

 自律神経学〜生活習慣病との機序〜

 (公社)全日本鍼灸学会認定指定研修C講座

 愛知医科大学客員教授(脳神経内科) 岩瀬 敏 先生

 

 今回の講義では、脳血管障害について脳血管障害の疫学を始めとして、危険因子とともにリハビリテーションについて分かりやすく解説していただきました。

 脳血管障害の死亡率は減少傾向である。その要因にCTの発明が大きなファクターを占めている。CTによって脳梗塞、脳出血、くも膜下出血の分類分けから戦略を立てることができるようになった。その後、グリセオールの発明によって、脳圧の改善ができるようになり、生存率が大きく上昇した。

  脳血管障害の主要なリスク因子として、喫煙や過度の飲酒、肥満、不適切な食事、運動不足があげられ、高血圧、糖尿病、高脂血症などの慢性疾患は脳血管障害のリスクを大幅に増加させる。特に血圧管理(家庭血圧125/75mmHg未満目標)と禁煙が重要で、これらを実践することで発症リスクを大幅に減らせるとされている。

 脳血管障害の診断順序としては、迅速に神経学的診察、病歴聴取をした上で画像診断をすることが重要である。

脳梗塞の時期別リハビリテーションとして、発覚時には血栓溶解療法(t-PA) や血栓回収療法を行ったうえで、発症当日からリハビリテーションを行うことによって、後遺症を最小限に抑えることができる。

 このリハビリテーションには作業療法士、理学療法士、言語聴覚士など多岐のリハビリテーションの連携が重要である。特に岩瀬先生はニューロリハビリテーションの重要性を示唆されました。

 脳血管障害では一次予防は防ぎにくいが、二次予防について考える必要がある。岩瀬先生は薬と食事、運動で予防することが重要であり、医者をはじめ鍼灸師もその点を考慮したうえで患者対応をしていくことが大切であると教えていただきました。

 

 

 

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澤田 誠 先生
澤田 誠 先生

2)AM11:10~12:10

 「感情」とはなんだろう〜脳と感情を考える〜

 第5回 ストレスのメカニズムと対処法

 (公社)全日本鍼灸学会認定指定研修C講座

  名古屋大学名誉教授 澤田 誠 先生

 

 今回の講義ではストレスのメカニズムと対処法と題しまして、ストレスのメカニズム、ストレスを克服するにはといった内容に加えて、脳科学と鍼治療の接点といった内容を分かりやすくお話しいただきました。

ストレスのメカニズムとして、不快の司令塔の扁桃体が快・不快を判断して、脳が脅威(ストレッサー)と認識した場合には、視床下部を介して全身に警告を起こす。この不快感がトリガーとなって引き起こされる生体反応が、いわゆる「ストレス」である。

 視床下部からの生体反応として主に2つのルートがあり、即時対応としてノルアドレナリン等を介する交感神経系と、持続的なエネルギー供給を引き起こすストレスホルモンのコルチゾールを利用した内分泌系の経路で反応をする。また、一度司令を出したが、脅威ではなかった場合は前頭前野がブレーキをかける役割を担う。それに加えて、海馬は血液中のコルチゾールの濃度を感知するセンサーの役割を担っており、コルチゾールが増えすぎた場合には抑制をかけるフィードバック回路を持っている。

 鍼治療がストレスに有効な理由として、視床下部をはじめとする自律神経系のリセット、扁桃体·前頭前野の活動正常化、海馬の機能を回復・保護、ノルアドレナリンの過剰放出の抑制と再取込の調整といった効果が見込める。

 ストレスは人体に悪影響を及ぼすだけでなく、短期ならポジティブな反応も多い。不安も興奮もメカニズムは一緒であり、ストレス反応は主観によって左右され、どうでもいいことはストレスを感じず、自分にとって大切なことが脅かされたときに生じる。ストレス反応を抑え込んだり、対処することをせず、利用するという考えが大切であることを教えていただきました。

 

 

 

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