· 

令和7年度第5回(325回)Web講習会

日時:令和8年2月1日(日) AM9:00~PM12:10

会場:Zoomによるオンライン会場

内容

岩瀬 敏 先生
岩瀬 敏 先生

1)AM9:00~11:00 

 自律神経学〜生活習慣病との機序〜

 (公社)全日本鍼灸学会認定指定研修C講座

 愛知医科大学客員教授(脳神経内科) 岩瀬 敏 先生

 

 今回の講義では血圧を下げる対策と降圧剤についてお話しいただくとともに、脳血管障害の分類と治療薬など多岐にわたり分かりやすく解説していただきました。

 血圧を下げる対策として、食事と運動、薬物療法があげられる。

 食事に関しては塩分摂取量の管理が効果的で、1日当たり6グラム未満にすることが推奨されている。

 また、運動としては有酸素運動が効果的だが、ラジオ体操といったストレッチも有効である。

 薬物療法では降圧薬治療の併用療法が一般的で、カルシウム拮抗薬とACE阻害薬を使われることが多いが、日本人はレニンが多い理由から、カルシウム拮抗薬+ARBの併用が有効である。これに対して利尿薬は高齢者に対して脱水を起こす危険性あり注意が必要である。

 脳血管障害は脳梗塞、脳出血、くも膜下出血に分類され、脳梗塞は増加傾向にあり、脳出血は減少傾向にある。脳梗塞が増えた理由として、高血圧に加え、糖尿病、高脂血症(脂質異常症)、喫煙、肥満、運動不足などの生活習慣病の増加が動脈硬化を促進したことに加え、心房細動(不整脈の一種)などの心臓病の増加に伴い心原性脳塞栓症が増加したことが要因として挙げられる。一方、脳出血は高血圧が主要因だが、高血圧の内科的治療(降圧剤など)が一般化し、血圧コントロールが改善したことで、血管が破れにくくなったことや、減塩食の浸透も大きな要因と考えられる。

 脳血管障害の大きなデメリットは麻痺の後遺症が長く続くことである。二次予防が重要であり生活習慣の改善(禁煙、減塩、食事療法、適度な運動、節酒)と、医師の指導のもとでの適切な薬剤(抗血小板剤、抗凝固剤など)の生涯にわたる服用が中心である。特に高血圧、糖尿病、脂質異常症といった危険因子の管理が重要で、再発後の症状悪化を防ぎ、生活の質(QOL)を維持するために不可欠である。

 

 

会員用ページ(パスワードが必要)にて動画配信しております。

澤田 誠 先生
澤田 誠 先生

2)AM11:10~12:10

 「感情」とはなんだろう〜脳と感情を考える〜

 第4回「不安」という感情の本当の意味

 (公社)全日本鍼灸学会認定指定研修C講座

  名古屋大学名誉教授 澤田 誠 先生

 

 今回の講義では『不安:感情としての異質性とその意義』と題しまして、不安(不快の情動)に対してセロトニンとからめて、不安にだけある特徴を分かりやすく解説していただきました。

 恐怖や悲しみ、怒りに対して、不安の感情の特徴として、1つ目に「未来」を向いていることがあげられる。まだ起きていないこと(未来)をシミュレーションしており、脳が何か悪いことが起きるかもしれないと予報を出している状態である。2つ目に、対象が「曖味」である。不安は対象がはっきりせず、なんとなく将来が心配、失敗するかもしれないといった、形のないモヤモヤが特徴である。3つ目が「準備状態」が続くことである。不安は未来の不確実性が消えない限り、脳が警戒を解けず、じわじわと長く続く性質がある。

 脳が最も嫌う状態の一つが不確実性である。悪いことが起きると分かっている時よりも、何が起きるか分からない時の方が、脳は強いストレスを感じるようにできている。不安という感情は、いわば高性能すぎる警報器が、何かあるかもしれないから、ずっと警戒するよう命令し続けている状態で、他の感情のように出し切ってスッキリとはならない。

 不安感にはGABAとセロトニンが深くかかわっている。セロトニンが不足すると、扁桃体の興奮を抑えられなくなるといった調整の役割を担う。それに対して、GABAは脳の興奮を鎮める物質で、不安を感じやすい人はこのGABAの働きが弱まっていることが多い。

 鍼治療は「不安」という情動の神経生物学的基盤に対して、一定の有効性を示すことが多くの臨床・動物研究で示されている。その効果は単なる「リラックス」ではなく、脳の情動制御系、自律神経系、ストレスホルモン系を多層的に調整する作用によって生じると考えられている。

 「不安」は起こってないが起こるかもしれないストレスや恐怖に対して生じる反応で、対人関係の構築や共感に関与し、不安を持つことで生存確率を増大させ、人類の文明や進化に深く関与している。

 

 

会員用ページ(パスワードが必要)にて動画配信しております。