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令和7年度第1回(321回)Web講習会

日時:令和7年7月8日(日) AM10:10~PM11:40

会場:Zoomによるオンライン会場

内容

宮崎 総一郎先生
宮崎 総一郎先生

1)AM9:00~10:30

 鍼灸に活かす睡眠学 〜睡眠のメカニズムと睡眠改善法〜

 (公社)全日本鍼灸学会認定指定研修C講座

  日本睡眠教育機構理事長

  放送大学客員教授 宮崎 総一郎先生

 

今回の講義では『鍼灸に活かす睡眠学~睡眠のメカニズムと睡眠改善法~』と題しまして、呼吸の仕方に始まり、睡眠の効用と睡眠改善法に至るまで、実演もふまえながら分かりやすくお話いただきました。

 

口呼吸は呼気にて湿度や体温を失いやすいのに対して、鼻呼吸は呼気中の水蒸気は鼻粘膜上に凝縮し、次の吸気相で利用されるため、湿度を逃がしにくくなる。また、鼻甲介は皮膚に対する温・寒冷刺激による呼気温変化を抑える効果がある。

 睡眠の効用として、大脳の神経細胞はノンレム睡眠時に最適化が行われて、記憶の整理が行われる。それによって物覚えが良くなったり、手続き記憶やエピソード記憶の向上が見込める。具体例として大学生のバスケットボール選手に対して、十分な睡眠をとれるように調整したところ、日中の眠気や疲労度が減少するだけでなく、走力が向上したりシュートの成功率が上がったりといった効果が見受けられた。それ以外にも、睡眠時間が減少すると風邪の罹患率が向上したり、ワクチンの効果減少を引き起こすといった研究結果も明らかになっている。

 睡眠必要時間は基礎代謝に比例して、基礎代謝が高ければ必要睡眠時間も増え、思春期の学生は8~10時間の睡眠が必要である。睡眠不足症候群になると耐えがたい眠気、イライラ、不穏、集中力低下、意欲低下や疲労感を引き起こす。休日に1~2時間以上長く寝ている場合は要注意である。

 睡眠の改善法として、体内時計を動かす3大要素があり、『光』、『食事』、『活動』が重要である。朝の光(青い光)により縫線核からセロトニンが分泌することで脳が覚醒し、逆に暖色系の光はメラトニン分泌を妨げず、眠気を誘発する。また、朝食を欠くことで日中の眠気と不眠症状を増大させる統計も示唆されている。活動としては、夜にメディアを利用することによって、メラトニン分泌量が抑制され、覚醒を促してしまうため、夜に書籍などを読む際には、電子書籍ではなく紙媒体で読むことも効果的である。

 以上のようなことに気をつけて、生活の質を向上するうえで、眠りの良い循環を作ることが大切である。