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第256回定例講習会

日時:平成23年11月6日  午前9時30分~午後3時

場所:名古屋市立大学医学部教育棟2F 第1講義室

内容

1)臨床鍼灸医学研究  サイエンスとしての鍼灸医学5

(社)生体制御学会理事・名誉会長 黒野保三先生 

①生体制御学会として20年先を見据えた行動の指針を説明いただいた。

②本当の統合医療の土俵に上がるために、近代医学と同等の認識と知識が必要であることを、鍼灸界の現状を示されながら説明いただいた。 

③医療崩壊が予想されるなか、鍼灸師がその受け皿になるために、正しい情報に基づいた正しい場所での勉強の必要性を説かれた。

(内容紹介)

今年の大きな事業が終了し、本年の講習会も最後となりました。生体制御学会では、10年20年先を見据えており、黒野保三先生に今なすべきことについて示唆いただきました。

「去年までは、統合医療、代替相補という言葉が世間をにぎわせました。その証拠に、昨年の3月には統合医療の研究に10億円もの国家予算がついたのは記憶に新しいところです。しかしながら、わずか半年の間にまったくその声を聞く事がなくなりました。これは、私から見れば当然と言わなければいけないことです。

 統合医療というのは近代医療と一緒になってディスカッションして行うものです。例えば、この患者さんに対しては鍼治療を先に行った方が良いなど、何を優先して行うかということが判断できるシステムが確立していないといけません。しかしながら、このディスカッションを行う土俵にあがれる鍼灸師がどれだけいるでしょうか?ディスカッションをするためには、医療に対する知識や認識が同等でないと無理であります。

 残念ながら、鍼灸界では、日本の中心の学術団体でさえ、首を傾げなければいけないことを発言しております。特に、日本の鍼灸を世界に発信しなければいけないということを宣言しております。では、日本の鍼灸とは何でしょうか?他の国と何が違うのでしょうか?

医療がベースにあるならその基礎は共通であるため、日本の鍼灸が特別であるということはありえません。また、日本の鍼灸もまだまだ、検証しなければいけないことばかりです。総論を話すことは非常に耳あたりがよいですが、実体がなければ何も進まないのです。この五十年をみればそれはおのずと理解できると思います。

 また、先だって東京大学医学研究所を中心としたグループが医療崩壊の指数を提示しました。25年後にはきちんとした診療を受けられる患者は、現在の半分になるというのです。そして愛知県はその崩壊率が全国の4番目と予想されています。

 このような医療崩壊が予想されている中で、本来は鍼灸師が受け皿になるべきです。受け皿になるには、最低限でも医療の中で共通の土俵にのぼれる知識と認識を身に着けなければならず、そして着実な実績が必要であるのです。現在その場所は、この生体制御学会であるといっても過言ではなく、その証拠も提示できるのです。」と教えて頂き、今後の鍼灸界、鍼灸師としてあるべき姿を示して頂きました。

2)生体情報の東洋医学への応用について (認定指定研修C講座)

名古屋市立大学大学院芸術工学研究科教授  横山清子先生

スライドを使用し、生体情報の捉え方やその意義、そしてその臨床的応用について、最新の研究や情報を交えて詳細な説明がなされた。

3)生体防御免疫疾患の基礎・臨床、診断と治療                    

(公社)生体制御学会研究部生体防御免疫疾患班長  井島晴彦先生

「アレルギーの話」と題し、スライドを使用し詳細な説明がなされた。

4)生体防御免疫疾患に対する症例報告・検討

脉診研究会鍼和会会長  前川勝治先生

「アトピー性皮膚炎について」と題して症例検討が行われ、活発な質疑応答があった。