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インフルエンザの予防について

平成24年1月号

(社)生体制御学会会長

中 村 弘 典

 

 平成19年8月まで「研究班紹介」と題して研究班の班長の先生より研究班の紹介を頂いておりましたが、9月より、メディアの医療情報の中で研究班に関係する記事がありましたら各班長にコメントを頂き、日頃の臨床に役立てて頂く目的で「生体制御学会NEWS」を発信させて頂きます。

 今回は『インフルエンザの予防について』について、生体制御学会研究部生体防御免疫疾患班班長の井島晴彦先生に以下のように解説して頂きました。

 

 

インフルエンザの予防について

 

生体制御学会研究部 生体防御免疫疾患班班長

井島 晴彦

 

 インフルエンザの予防について次のような報道がありました。

「インフル予防にトローチ開発 京都のバイオ企業」

 インフルエンザ感染を抑える抗体入りのトローチを、バイオベンチャー企業ファーマフーズ(京都市)とミヤリサン製薬(東京)が共同開発し、健康食品として販売を始める。「通勤・通学など人が混み合う所へ行く前になめれば、感染予防に役立つ」(ファーマフーズ開発部)という。

 

 ファーマフーズは、ニワトリの卵を使って抗体を作り出す技術をもつ。京都府立医科大と共同で、ニワトリにインフルエンザウイルスを注射し、卵黄からウイルスに対する抗体をつくったところ、30秒以内にウイルスが死滅する効果を確認。唾液(だえき)で効果が失われることもなかったという。

 トローチの商品名は「バリフル」(1箱18錠入り)。季節性と新型のインフルエンザウイルスのほか、弱毒性の高病原性鳥インフルエンザウイルスの抗体も含む「万能型」で、子どもがなめても大丈夫という。今月中にも薬局・薬店の店頭に並ぶ予定。

2011.10.19 asahi.com

 

「インフル予防」トローチ発売中止 医薬品と誤解の恐れ

 「インフルエンザ予防に役立つ」として、ミヤリサン製薬(東京)とバイオベンチャーのファーマフーズ(京都市)が共同開発したトローチが発売中止になった。健康食品として今月中にも売り出す予定だったが、予防に期待する消費者からの問い合わせが殺到。製造販売元のミヤリサン製薬は「医薬品と誤解される恐れがある」と判断した。

 

2011.10.21 asahi.com

 

 これらの報道から感じたことは、一般の方ができる新型インフルエンザに対する予防方法で、一番肝心で誰でもできることは、体の調子や免疫力を高めることだと考えます。規則正しい生活、適度な運動、偏らない食事をすることや、過剰なストレスを受けないこと、生活に笑いを取り入れることなどが重要です。

 

 また、鍼治療が風邪症候群の予防に役立つことを、生体防御免疫疾患班を代表して角村幸治先生が「かぜ症候群の予防に対する鍼治療の有効性 -多施設によるアンケート調査-」(全日鍼灸学会雑誌59巻4号,416-420,2009)と題して報告しています。

 

 この研究は、東洋医学研究所®グループの12施設に来院した患者215名に対し、①鍼治療前の1年の風邪罹患回数、②鍼治療後の風邪罹患回数の変化、③鍼治療来院期間についてアンケートにより調査・分析したものです。

 その結果は、鍼治療来院期間2年未満では風邪をひきにくくなったと回答した人は45.9%であり、2~4年で63.3%、4年以上で82.8%となり、長く鍼治療を受けることで風邪症候群を罹患しにくくなったと自覚する患者が増えることが報告されています。

 以上のことから、自然な方法で免疫力を高める努力をしたうえで、正しいうがいや、手洗い、マスクの着用を心がけることが必要だと考えます。このような努力は、体調を良好に保ち、通常のインフルエンザの予防にも役立つと考えられるため、是非実行して頂きたいと思います。

 

 また、生体防御免疫疾患班の研究日には、インフルエンザウイルスなどのウイルスに感染した場合に、どのような仕組で防御するかなどの免疫の基礎的な内容について、わかりやすく説明させて頂いております。 是非、一緒に免疫の勉強をしましょう。

 一緒に勉強して頂ける方は、(社)生体制御学会事務局か、井島までご連絡下さい。