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第255回定例講習会

日時:平成23年10月2日  午前9時30分~午後3時

場所:名古屋市立大学医学部教育棟2F 第1講義室

内容

1)臨床鍼灸医学研究 サイエンスとしての鍼灸医学4

(社)生体制御学会理事・名誉会長 黒野保三先生 

①生体制御学会が学術団体として評価されている根拠と現状を説明いただいた。

②鍼灸診療が医療の水際でチーム医療の一員として行うための、役割とそれの担うだけの条件について、現状を示されながら説明いただいた。 

③今後20年先を見据えた鍼灸医学をなりたたせるためには、正しい情報に基づいたものでなければならず正しい場所での勉強の必要性を説かれた。

(内容紹介)

 定例講習会の前に、8月28日に開催された第29回生体制御学会学術大会に対するお礼の言葉を述べられました。各方面から、この学術集会の演題、講演内容は基より、学会運営がすばらしいと評価されていることが報告されました。この学会のように、一般社会でもみられない秩序が正しく行えている団体はなく、学術団体としての歴史、業績、規模が評価され、愛知県の教育委員会から推奨されました。このような学会の会員は高度な資質を問われますが、この学会が目指している方向からすべての謎を解くことができます。そのことについて示唆いただきました。

「この学会は医療人として治療を行う人の集まりです。これからの医療はチーム医療です。チーム医療の一員として、医療の水際を任されるべき鍼灸師にならなければいけません。残念ながら、現在の近代医療の水際は崩壊に向かっています。例をあげますと、大学の付属病院の閉鎖が決まったり、来年の医療改革によって法律が変わることによる勤務医と開業医の対立があげられます。これでは、この先どうなっていくか分からないし、明らかに利害関係に目線が向いています。国民の目線から考えれば、我々鍼灸師が、一致団結して、精度の高い治療を提供できれば、国民から信頼されることは間違いありません。それには、今信頼に足るための勉強をしなければなりません。

生体制御学会で行われる鍼治療にはすべて基礎研究の裏付けがあります。つまり、生体制御学会では神経生理学を中心とした生理学を基として、それに付随する自律神経の機能や免疫学の基礎医学をベースにした治療法の構築を続けており、これを継承しています。これには、私が1956年に、黒野式全身調整基本穴という生体制御を行う治療の経穴を選定した時から、一貫して行っており、医師をはじめとしたどの分野の人にも共通した基盤にのっているので、信頼が置かれています。鍼灸治療は、ここ40~50年続いた、鍼麻酔によるブームで有頂天になっていた過去と違って、今は氷河期といってもいい時代に入っています。しかし、今後20年先を見据えて、本当に信頼される水際の医療を作れば、一般の人たちは自然と頼ってくれる時代がきます。今、着実な勉強をしておけば、その時に確かな位置で診療ができます。」と教えて頂き、この学会の価値もあらためて示されました。

2)レッド・フラッグサイン (認定指定研修C講座)

名古屋第二赤十字病院 救急・総合内科部長 野口善令先生

「よくある症候のなかに危険をかぎとる」と題し、スライドを使用し、臨床上注意を要する身体症状の捉え方について、最新情報を交えて詳細な説明がなされた。

3)生体防御免疫疾患の基礎・臨床、診断と治療                    

(公社)生体制御学会研究部生体防御免疫疾患班長  井島晴彦先生

「古い免疫システムと新しい免疫システム」と題し、スライドを使用し詳細な説明がなされた。         

4)生体防御免疫疾患に対する症例報告・検討

(社)生体制御学会監事 石神龍代 先生

「アトピー性皮膚炎に対する鍼治療の一症例」と題して症例検討が行われ、活発な質疑応答があった。