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第253回定例講習会

日時:平成23年4月3日  午前10時~11時

場所:名古屋市立大学医学部教育棟2F 第1講義室

内容

1)臨床鍼灸医学研究 

(社)生体制御学会代表理事 黒野保三先生 

①東日本大震災の犠牲者に対して黙祷が行われました。また、被災地での日本人の精神文化にのっとった美しい行動について説明がなされた。

②サイエンスとしての鍼灸医学として、一歩一歩積み重ねる着実な研究の必要性と、言葉だけが一人歩きする鍼灸界について説明がなされ、本当の研究、学問、医学の定義を説明され、当学会の確実な歩みの必要性について示唆されました。

(内容紹介)

 講義の最初に先立ち、3月11日に起きた東日本大震災の犠牲者に対して黙祷が行われました。そして次のような示唆を与えてくださいました。

「災害に被災された方には、心からお悔やみを申し上げます。この度被災された方々の助け合いの精神や礼儀正しさが、各国から賞賛されたことは記憶に新しいと思います。日本人は日本の精神文化を持っており、ならず者が横行している時代において溜飲が下がる思いでした。一部の政府官僚も見習って頂き一歩一歩着実に行っていくことが、いままでインチキをしてきたことを正す唯一の方法であるということを改めて認識できたと思います。

 次にサイエンスと鍼灸医学についてでありますが、これも精神は一緒です。一歩一歩基礎から積み上げたものしか医学にならないことは明らかですが、特に鍼灸界ではそれは明らかです。まず最小限、このことが本当のことか嘘のことかを見極めることが大事であり、それを間違えたときにはすぐに認め謝らなければなりません。

 例えば、鍼灸医学は三千年の歴史を有しているとよく言います。本来医学は進歩発展していくはずのものですが、歴史を有しているからそのままでいいということは医学としてはありえません。また、鍼灸に歴史があっても、今治療を行っている先生が歴史がある治療を用いても、その先生自身にその歴史があるわけではありません。また、伝統鍼灸医学という言葉も聞きます。本来、伝統鍼灸医学はそのまま継承するのが良いわけではなく、現在にいかせるようにするのが伝統鍼灸医学であり、古典を鵜呑みにするわけにはいかないのです。また、鍼灸界で一人歩きしていて中身がない言葉には、未病治、経穴、経絡、五行説、癒しの治療など数え切れないほどあります。こういう中身がない論法では本当の鍼灸の発展はありません。そこで、鍼灸の科学科を行っていくのが学術団体である当学会なのです。

 ここで、もう一度何をやっていくのかを明らかにするために、研究・学問というものの定義を明らかにしておきたいと思います。研究とはよく調べて真理を究めること、実際に調べて証明すること、論ある仮説から論理的に導き出された結論を、事実の観察や実験の結果と照らし合わせてその仮説の真偽を確かめること、学問とは明らかになっていないものを研究し検証した結果を民衆に公開し認知された理論を多角的に検証し辞典に掲載されて体系化した理論をひとつの学問というのです。

 これに基づいて只今研究を継続しており、効果的な鍼治療の方法について、世界に向けて発信したばかりです。このような手続きをとった研究は必ず積みあがっていくものであります。」と教えていただき、今後のこの学会の指針を示されました。