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知って防ごう心不全

平成23年3月号

(社)生体制御学会会長

中 村 弘 典

 

 平成19年8月まで「研究班紹介」と題して研究班の班長の先生より研究班の紹介を頂いておりましたが、9月より、メディアの医療情報の中で研究班に関係する記事がありましたら各班長にコメントを頂き、日頃の臨床に役立てて頂く目的で「生体制御学会NEWS」を発信させて頂きます。

 今回は『知って防ごう心不全』について、生体制御学会研究部循環器疾患班班長の服部輝男先生に以下のように解説して頂きました。

 

 

知って防ごう心不全

 

生体制御学会研究部 循環器疾患班班長

服部 輝男

 

 心臓のポンプ機能は自律神経によって制御され、収縮性と心拍数を変化させることによって全身の細胞の需要に見合うだけの血液を拍出しています。

 しかし、何らかの原因となる疾患によって心機能が障害され、心臓本来のポンプ機能が低下した状態となり、身体が必要とするだけの血液を拍出できなくなった状態が心不全です。

 心不全はポンプ機能の低下したところが左心室であるのか右心室であるのか、あるいは左右両方の心室であるのかによって左心不全、右心不全、両心不全に分けられます。また、発症からの時間経過により急性心不全と慢性心不全に分けられます(表1)。

 

表1 心不全の分類

  急   性 慢   性
 左心

急性左心不全

原因:急性心筋梗塞など

症状:心原性ショックなど

慢性左心不全

原因:高血圧症、弁膜症、心筋症など

症状:呼吸困難、起座呼吸など

右心

急性右心不全

原因:肺塞栓症など

症状:呼吸困難、胸痛など

慢性右心不全

原因:肺性心(慢性肺高血圧)など

症状:体静脈のうっ血、浮腫、肝腫大、腹水など

さらに、心不全の急性増悪をきたす因子を表2に示します。

表2 心不全の急性増悪因子

・Na制限不十分、水の過剰摂取

・肺その他の感染症

・貧血

・高血圧

・甲状腺機能亢進症

・妊娠

・精神的ストレス

・不整脈(頻脈性、徐脈性)

・心不全と無関係な合併症:腎障害、肝障害など

・ 服薬の無断中止、過剰服薬

 心不全は死の直接原因となる状態であるため、心不全に至らないような生活を営むことが肝要です。肺炎その他感染症に十分注意し、血圧の自己管理、塩分制限などを行うことにより、心臓に余計な負荷をかけないようにして健康長寿を全うしたいものだと思います。

 

文献

松尾 理監修、岡田隆夫編集.よくわかる病態整理2 循環器疾患:2006・10

市田 聡. ハート先生の心不全講座 第二版: 2010・2