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第249回定例講習会

日時:平成22年10月3日  午前9時30分~午後3時

場所:名古屋市立大学医学部教育棟2F 第1講義室

内容

1)「臨床鍼灸医学研究」

(社)生体調整機構制御学会理事・名誉会長  黒野保三先生

①(社)生体調整機構制御学会28回学術集会の協力に対するお礼が述べられ、また学会の価値が高まっていることについて説明がなされた。

②形骸化している統合医療を本物にするために、近代医学との共通の言語でディスカッションできることの必要性を説き、それに向かう学会の価値について説明があった。

③学会の今後の立ち位置や方向性について説明がなされた。

(内容紹介)

 平成22年8月29日(日)に行われた第28回(社)生体調整機構制御学会学術集会における会員の協力に対して感謝の言葉を述べられました。そして、学術団体として着実に進歩してきていることを実感し、また、この学会が評価される結果となっていると報告されました。そして、最近の業界や学会のニュースなどからお話を頂きました。

 「30年の長年にわたって苦言を呈してきた、愛知県の行政団体がやっとすっきりとした形となり、行政団体、学術団体、教育団体がおのおのの立場で発展できるようになりました。会員が迷うことがないことが必要であり、そのためにはきちっとおこなっている団体の必要性があらためて浮き彫りとなりました。

 なぜこのようなことを言うかと言いますと、現在は日本列島には住民がいるが日本人がいないというほど、日本人としての精神文化が崩れ、勝手気ままなことを行い大変なことになっています。鍼灸治療においても、現象があるから良い、歴史があるから良いといいますが、本当でしょうか?長いこと騙されてきただけではないでしょうか?つまり、自分だけの解釈で行い、本当のことを認識しないままでいるために世相に流されています。

 この代表例と考えられるのが統合医療ではないでしょうか。統合医療はもちろん良いことですが、現在では総論しかなく各論がありません。対照的にチーム医療という言葉があります。これには実体があり、医師、看護師、理学療法士、薬剤師などの医療関係者が集まって、一人の患者さんにあたります。ここに、統合医療との違いがあり、鍼灸治療は近代医学と対等な理論を持ってテーブルにつけない場合がほとんどです。ここで、ほとんどと言ったのには、愛媛県の県立病院では若い鍼灸師を教育したのち、一緒に治療したりしている例もありますが、何より実際に実践した経験が私にはあるからです。名古屋第一生命ビルの中での近代医学の各科があり、ドクターグループと云われていました。その中に東洋医学科が同等の立場で診療を行ない、月に1回の全体の会議でディスカッションを行なってきました。その時から、近代医学とディスカッションできる同じ理論を持たない限り鍼灸診療は発展がないと感じていたからです。これが、30年前から行ってきていることなのです。

 このようなことを行えるようにするには、やはり正しい場所で勉強することで、偏った知識ではなく集学的な知識が必要です。このまま勝手気ままを続ければ将来は自ずと知れるのではないでしょうか。」と教えて頂きました。

 そして、今後の学会の方向性には、医療の水際でのことと実証医学的な両側面を兼ね備えることが大事であり、この学会はその理念に一番あっていることを説明していただきました。また、この方向性を実現するための刺鍼技能や治療原則の総論をお話いただき、次回から各論に入ることを示して頂きました。

2)「医療者のためのコミュニケーションスキル」(認定指定研修C講座)

名古屋第二赤十字病院 救急・総合内科部長 野口善令先生

「-よりよい患者-医療者関係を築くために-」と題し、実際にコミュニケーションをとるための方法論の理解のための体験の後、スライドを使用し最新情報を交えてコミュニケーションスキルについて詳細な説明があった。

3)「生体防御免疫疾患の基礎・臨床、診断と治療」

(社)生体機構制御学会研究部生体防御免疫疾患班班長  井島晴彦 先生

「生体防御免疫疾患の基礎・臨床、診断と治療」と題し、細菌防御のストーリーについてスライドを使用し詳細な説明がなされた。

4)生体防御免疫疾患に対する症例報告・検討

(社)生体調整機構制御学会会員 橋本高史 先生

「アレルギー性鼻炎に対する2年間の鍼治療の経過観察」と題して症例検討が行われ、活発な質疑応答があった。