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花粉症の豆知識と研究報告

平成22年7月号

生体制御学会会長 中 村 弘 典

 

 平成19年8月まで「研究班紹介」と題して研究班の班長の先生より研究班の紹介を頂いておりましたが、9月より、メディアの医療情報の中で研究班に関係する記事がありましたら各班長にコメントを頂き、日頃の臨床に役立てて頂く目的で「生体制御学会NEWS」を発信させて頂きます。

 今回は『花粉症の豆知識と研究報告』について、生体制御学会研究部疼生体防御免疫疾患班班長の井島晴彦先生に以下のように解説して頂きました。

 

 

花粉症の豆知識と研究報告

 

生体制御学会研究部 生体防御免疫疾患班班長

井島 晴彦

 

花粉の観測方法

 飛散してくる花粉の測定には通常ダーラム型と呼ばれる装置が用いられています。

 中央には顕微鏡などで使われるスライドグラスが固定されていて、更にその上にワセリンを塗った1.8cm四方のカバーグラスが設置されています。通常この装置は、ビルの屋上などに置かれています。毎日決まった時間(普通は朝9時)にカバーグラスが交換されます。1昼夜装置の中に置かれたカバーグラスの上に飛散し、付着した花粉は顕微鏡で1個1個の種類を判別しながら目で数えていきます。各地のスギ花粉飛散量などの情報提供は、研究者や保健所の方々のこのような地道なボランティア活動によって支えられています。

 

初期観測日とは?

 1月1日から観測を始め、ダーラム型花粉採集器のカバーグラス状に1個でも花粉が観測された最初の日をいいます。花粉の観測はスライド上に落下した花粉を顕微鏡で計測し、1cm2あたりの花粉数を発表しています。計測する面積は3.24cm2で、この中に1個でも新しいスギ花粉が観測された日を初観測日と言います。

 

飛散開始日とは?

 ダーラム型花粉採集器にて1cm2あたり1個以上の花粉が2日以上連続して観測された最初の日をいいます。カバーグラスの面積は3.24cm2(1.8cm×1.8cm)であり、この中に4個以上花粉があると1cm2あたり1個以上となります。この状態が2日間以上続くと最初の日が飛散開始日となります。

 本格的な花粉の飛散シーズンの幕開けと考えてください。初観測日と飛散開始日の間には2週間程度のずれがあるのが普通です。この間にも少量の花粉が飛散するために花粉に敏感な患者さんは症状が出てしまいます。毎年早めに症状の出る患者さんは初観測日の情報があったらなるべく早めに、花粉を防ぐための対策をしたほうがよいでしょう。

 

 そこで、花粉症の症状をできるだけ軽く抑えるための予防方法と治療方法として鍼治療が考えられます。花粉症症状に対しての鍼治療効果に関する研究については、生体防御免疫疾患班により、第55回~59回(社)全日本鍼灸学会学術大会において報告しました。

・アレルギー性鼻炎に対する鍼治療の検討 

  -2005年スギ花粉飛散期の動態調査-

・アレルギー性鼻炎に対する鍼治療の検討 

  -スギ花粉飛散期における鍼治療効果の検討-

・アレルギー性鼻炎に対する鍼治療の検討(第2報)

  -スギ花粉飛散期における鍼治療効果の検討-

・アレルギー性鼻炎に対する鍼治療の検討(第3報)

  -スギ花粉飛散期における鍼治療効果の検討-

・アレルギー性鼻炎に対する鍼治療の検討(第4報)

  -2008年スギ花粉飛散期における検討-

・アレルギー性鼻炎に対する鍼治療の検討(第5報)

  -2009年スギ花粉飛散期における検討-

・アレルギー性鼻炎に対する鍼治療の1症例

・鍼灸院における花粉症患者の実態調査

 

 これらの研究では、花粉症症状に対する鍼治療の有効性について、日本アレルギー性鼻炎QOL調査票(JRQLQ)を指標とし検討したところ、鼻・眼の症状やQOL質問項目、総括的状態において有効であったことを報告しました。

 また、花粉症の症状は花粉の飛散量や、ストレス、気象、食べ物、黄砂など様々な要因によって影響を受けることもわかりました。

 このような結果から、鍼治療と適確な生活指導を組み合わせることにより、花粉症症状を予防し、さらに発症した症状を緩和する可能性が示唆されました。

 生体防御免疫疾患班では花粉症に対する鍼治療効果の研究を継続しております。

 今後の研究報告を、是非、楽しみにして下さい。