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腰痛に対する鍼治療の検討(10)-RDQを指標とした多施設での検討-(大阪大会)

東洋医学研究所®1)

東洋医学研究所®グループ2)

すこやか鍼灸院3)

河瀬美之2),石神龍代2),中村弘典2),服部輝男2)

皆川宗徳2),校條由紀3),黒野保三1)

 

【目的】

我々は腰痛に対する鍼治療の有効性を検討する目的で、 (社)全日本鍼灸学会学術大会において過去2回、RDQ日本語版とVASを使用し、鍼治療によりRDQ素得点と偏差得点、VAS値が有意に改善したことを報告した。

今回は男女と年齢差に着目し、RDQ素得点と偏差得点の推移を検討したところ、興味ある結果が得られたので報告する。

【方法】

対象は2006年10月1日から2008年10月31日までの2年間に6施設に来院した患者のうち、腰痛を主訴とした患者39例(男:女=18:21、平均年齢51.7歳)に対して鍼治療を行い、治療前にRDQを、治療前後にVASを使用して男女と年齢差を検討した。

【結果】

平均治療回数4.9回の鍼治療を行った結果、RDQ素得点の男女の平均値はそれぞれ初診時6.8点・10.8点、最終時4.3点・6.4点となり、有意な改善(P=0.0002・0.0006)が認められ、初診時の男女差(P=0.05)も認められた。また、RDQ偏差得点の男女の平均値はそれぞれ初診時41.2点・35.2点、最終時47.4点・44.0点となり、有意な改善(P=0.0003・0.0005)が認められたが、初診時の男女差は認められなかった。年齢比較において素得点では男性で40歳代・50歳代において、女性で60歳代・70歳代において改善率が高い傾向が認められたが、偏差得点ではその傾向は認められなかった。VAS値においては初診時治療前後と、初診時と最終時の治療前において有意な改善(P=0.0003・0.0002)が認められたが、初診時での男女差は認められなかった。

【考察・結語】

RDQはVAS値同様、腰痛に対する鍼治療の有効性を客観的に検討できうるものと推察された。また、RDQスコアはQOL尺度であるため、鍼治療の有効性を客観的に検討するには、年齢・性別を反映させた偏差得点算出の必要性が示唆された。

 

キーワード:腰痛、鍼治療、RDQ、偏差得点、VAS