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末梢性顔面神経麻痺(ラムゼイハント症候群)に対する鍼治療の1症例(大阪大会)

東洋医学研究所®グループ 井島鍼灸院

西田修 井島晴彦

 

【目的】

我々は、第57回全日本鍼灸学会学術大会(京都大会)において、ベル麻痺の1症例に対して鍼治療を施し、顔面神経麻痺の程度を客観的に評価する指標である柳原法(40点法)を使用し症状が改善したことを報告した。今回は、ラムゼイハント症候群を発症後、完全麻痺の状態に変化が認められなかった患者に対して鍼治療を施し、柳原法を使用して、鍼治療の効果を検討したところ、良好な結果が得られたので報告する。

【症例】

患者:65歳男性、主訴:ラムゼイハント症候群(平成20年6月15日発症)

症状:食事や歯磨きをすると右眼から涙が出る(ワニの涙)、右目がつぶれない、頭頂部~右顔面部がしびれる、ご飯を食べると口の右奥に溜まる。

治療期間:平成20年7月26日~平成21年2月3日の193日間(治療回数50回)

治療方法:週2回単刺術にて、生体の統合的制御機構の活性化を目的とした生体機構制御療法と症状の改善を目的とした局所療法を行った。

【結果】

初診時、柳原法4点(完全麻痺)であったものが、治療8回目には8点、15回目には14点、22回目には16点、3ヶ月経過した29回目には24点、36回目には34点、43回目には36点、最終時の50回目には38点となり、顔面神経麻痺の症状が正常な状態に戻った。

【考察】

ラムゼイハント症候群は麻痺が高度な場合、治癒率は50~60%とベル麻痺に比べて不良であり、6~12ヶ月経過後も麻痺が残り、病的共同運動等の後遺症を残す症例も報告されている。

この症例は、1ヶ月半にわたる薬物療法においても症状に変化がなく鍼治療開始後、徐々に症状が改善したことから鍼治療による効果と考えられる。

【結語】

前回のベル麻痺に続き、今回はラムゼイハント症候群に対する鍼治療の有効性を客観的に証明することができた。今後も、顔面神経麻痺の症例を積み重ね鍼治療の有効性を客観的に検討していきたい。

 

【キーワード】 ラムゼイハント症候群、顔面神経麻痺、完全麻痺、生体機構制御療法、柳原法(40点法)