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心拍変動解析による鍼刺激に対する自律神経反応の評価(4)-新しい心臓副交感神経の指標DCについて-(大阪大会)

東洋医学研究所®グループ1)

東洋医学研究所®2)

名古屋市立大学大学院医学研究科医学・医療教育学分野3)

 皆川宗徳1)  石神龍代1) 山田 篤1) 

  各務壽紀1)黒野保三2)  早野順一郎3)

 

【目的】

新しい心臓副交感神経の指標であるdeceleration capacity(DC)は、副交感神経のみが媒介し得る短時間の洞調律R-R間隔の延長を反映することから、純粋な心臓副交感神経の指標であると考えられている。今回、鍼刺激に対する自律神経反応を客観的に評価する目的で、従来の心拍変動(heart rate variability,HRV)指標とDCとを比較検討したので報告する。

【方法】

健康成人50名に対し腹部(中カン・天枢・気海)・胸部(ダン中、中庭)への鍼刺激(単刺術)を行い、鍼刺激前後の心拍変動の変化をGMS社製の心拍ゆらぎリアルタイム解析システムを使用して調べた。HRV解析は、鍼刺激の前後10分間の心電図からR-R間隔を測定し、DC を計測すると共に、周波数解析により0.04-0.15Hzおよび0.15-0.45Hzの変動を、それぞれLF、HFとして、パワーの自然対数値(ln)と両者のパワーの比(LF/HF)を求めた。

【結果と考察】

DCとHFパワーとの間には高い相関が認められた(r = 0.83 P < 0.000 1)。これは、HF成分が心臓副交感神経のみによって媒介され、その振幅は心臓副交感神経活動の程度と関連することとよく一致する。一方、DCはLFパワーとも相関を示した(r = 0.72 P < 0.0001)。LF成分は心臓副交感神経と交感神経の両者によって媒介され、その振幅は、心臓副交感神経活動と交感神経活動の両者の影響を受けるという報告と矛盾しない。DCはLF/HFとは相関を示さなかった(r = -0.15 P =0.14)。これは、DCが交感神経活動とは関連しないことを示唆する。

【結語】

新しい心臓副交感神経の指標DCと従来のHRV解析の自律神経指標との関係を調べた結果、DCは心臓副交感神経活動の指標であることが支持された。

 

キーワード:DC、鍼刺激、単刺術、心拍変動(HRV)、自律神経