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高血糖ラット胃平滑筋運動に対する鍼治療の神経制御の変化(大阪大会)

名古屋市立大学大学院医学研究科細胞生理学1)

東洋医学研究所®2)

東洋医学研究所®グループ3)

福田裕康1,3)  黒野保三2)

 

【目的】

糖尿病になると二次的に消化機能の低下をきたすことが知られており、特に胃活動の変化はQOLに直結する問題であるが、原因が多岐にわたるため、その差異も明らかにされていない。そこで2型糖尿病モデル動物である自然発症高血糖ラットOLETF(Otsuka Long-Evans Tokushima Fatty)を用いて鍼治療による胃運動の変化を調べた。

【方法】

実験にはOLETFとそのコントロールであるLETOを用いた。鍼治療はOLETFに対して生後6週から41週まで週2回、CV12、ST25、CV6、BL20、BL22、BL23に切皮程度の刺激を行った。その後、胃を取り出し短冊状に標本を作成し、等尺性収縮を記録しながら経壁電気刺激(TNS)や神経伝達物質を投与し、OLETF(n=6)、LETO(n=8)、鍼治療をしたOLETF(AcOLETF)(n=6)の3群の反応を比較した。

【結果】

実験開始時にはOLETFはLETOに比べ3倍、AcOLETFは2倍の血糖値であったが、自発収縮活動は3群において有意な変化を認めなかった。1Hz1分間のTNSは3群とも筋収縮を抑制した。神経制御の成分を検討するためにNO合成酵素阻害藥を処置した標本でTNSをすると、LETOとAcOLETFでは大きな収縮反応に転じ、OLETFでは抑制されていた成分がAcOLETFで回復した。また、アトロピンの追加投与によってOLETFとAcOLETFが同等の抑制をみたので、アトロピン感受性の成分がAcOLETFの方が多いことが示された。また外因性アセチルコリン(ACh)の反応は3群において有意な差を認めなかった。

【考察と結語】

高血糖ラットにおいて、糖尿病の進行にともなうTNSによる筋収縮の変化が長期間鍼治療をすることにより改善された。この鍼治療による改善にはNOとAChを伝達物質にもつ神経の増強が認められた。

 

キーワード:胃平滑筋運動、神経制御、長期鍼治療、高血糖ラット