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心拍変動解析による鍼刺激に対する自律神経反応の評価(1)-腹部鍼刺激に対する自律神経反応の評価-(大阪大会)

東洋医学研究所®グループ1)

東洋医学研究所®2)

名古屋市立大学大学院医学研究科医学・医療教育学分野3)

各務壽紀1) 石神龍代1)  皆川宗徳1)  山田 篤1) 黒野保三2)  早野順一郎3)

 

【目的】

鍼刺激に対する自律神経反応の客観的評価が可能か否かを、心拍変動(heart rate variability、HRV)解析を用いて検討した。

【方法】

健康成人30名に対し腹部(中カン・天枢・気海)への鍼刺激(単刺術)を行い、鍼刺激前後の心拍変動の変化をGMS社製の心拍ゆらぎリアルタイム解析システムを使用して調べた。HRV解析は鍼刺激の前後10分間の心電図からR-R間隔を測定し、周波数解析により0.04-0.15Hzおよび0.15-0.45Hzの変動を、それぞれLow frequency(LF)、high frequency(HF)として、パワーの自然対数値(ln)と両者のパワーの比(LF/HF)を求めた。また、新しい心臓副交感神経活動の指標としてdeceleration capacity(DC)を評価した。

【結果と考察】

鍼刺激前後で心拍数(平均値±標準偏差)は71.6±10.2から69.0±10.8 bpmに減少した(paired t-test P = 0.0001)。LnHFとDCとの間には相関(r = 0.907)を認めたが、鍼刺激前後で、LnHFは有意な変化を示さなかった(5.2±1.4から5.4±1.3)のに対し、DCは8.6±2.7から9.6±3.6msに増加した(P = 0.004)。LnLFは6.0±1.1から6.3±1.1に増加したが(P = 0.0175)、LF/HFは有意な変化を示さなかった(1.2±0.3から1.2±0.2)。

【結語】

鍼刺激により心拍数の減少が認められた。この変化に対応する自律神経反応は従来のHRV指標からは評価できなかったが、新しいHRV指標であるDCは明確な増加を示し、鍼刺激は心臓副交感神経の亢進を介して心拍数を減少させることが示唆された。新しい指標の導入によって、自律神経反応の客観的評価が可能であることが示唆された。

 

キーワード:鍼刺激(中カン・天枢・気海)、単刺術、心拍変動(HRV)、自律神経