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当院不妊症患者における脱落症例の検討(大阪大会)

森 誠一郎

 

【目的】

不妊症患者が当院を受診し鍼灸治療を併用して挙児を期待するものの、治療を継続できず脱落する症例も少なくない。今回、脱落した症例に注目し不妊症患者に対する治療の問題点を検討した。

【対象】

当院に2007年1月から2009年10月までに初診来院した不妊症患者673例のうち、妊娠に至らず脱落した症例は387例あり、転居や入院で中断が余儀なくされた7例を除く380例を対象とした。

【方法】

初診時の年齢、不妊期間、治療期間、出産歴、それまでの不妊治療方法、また、鍼灸治療開始後に行う不妊治療方法が脱落までの期間に影響を与えるかを検討した。

【結果】

初診時年齢は34.7±4.2歳、不妊期間は中央値36ヶ月(2-312)、治療期間は17ヶ月(0-264)であった。経産婦は58例、治療方法は自然・タイミング143例、AIH99例、ART137例、その他1例であった。当院に通院する不妊症患者の妊娠までの期間は自然・タイミングで平均4.5ヶ月、AIH4.2ヶ月、ART6.3ヶ月であった。脱落症例の脱落までの期間は平均3.9ヶ月(119±141日)で、年齢、経産、治療方法の違いによる有意な関連はなかったが、不妊期間と治療期間との間に有意な正の相関があった(p<0.01)。また、鍼灸開始後の不妊治療方法と脱落までの期間は自然・タイミング(147例)3.5ヶ月(107±141日)、AIH(88例)4ヶ月(122±139日)、ART(143例)4.3ヶ月(131±142日)であり有意差があった(p<0.01)。

【考察と結語】

初診時の不妊期間、治療期間が長い患者は鍼灸治療への期待が高く、継続期間が長くなり、鍼灸開始後に行う不妊治療方法は高度な医療を受ける患者の方が脱落しにくかった。しかし脱落症例全体では平均4ヶ月で脱落しており、患者の時間的ニーズに対応するための鍼灸治療方法の検討が必要であると考えられた。

 

キーワード:不妊症、脱落、鍼灸治療