日時:平成22年4月4日 午前10時~11時
場所:名古屋市立大学医学部教育棟2F 第1講義室
内容
1)臨床鍼灸医学研究
(社)生体制御学会代表理事 黒野保三先生
①鍼灸は医療であるというなら、その認識と自覚が必要であるが、現状ではそうなっていないということについて説明がなされた。
②欧州やアジアの鍼灸の現状を解説され、日本の鍼灸の立場の説明がなされた。
(内容紹介)
黒野保三先生より、次のような内容のお話を頂きました。
この研修会は学術研修会です。本来であれば、鍼灸の制度や法律や鍼灸界の状況などという話は業者団体が行う仕事です。しかしながら、本当のことを情報として配信しないどころか、鍼灸界に対する認識や情熱が感じられないことから、正しい鍼灸に対する認識をもって頂きたい。
何回もお話させて頂いておりますが、鍼灸の資格は医療を行う資格でしょうか?医療だと言うのなら、その認識と自覚を持たなければなりません。その自覚を持つには正しい情報、知識、技術そして仲間が必要となります。なぜ、そういうことを言うのかと申しますと、鍼灸が置かれている現在の立場に起因します。
鍼灸に対しては良いニュースも流れました。擦る程度の刺激で神経細胞の再生が行われているということです。以前から報告していますように、鍼刺激の量は20グラムで行ったときの神経反応が持続的に働き、有効であるという証拠を提出してきました。こういう基礎実験がエビデンスになる訳です。
世界に目を向けてみますと、現在、欧州ではドイツ、スウェーデン、デンマークで鍼灸の研究が活発になってきております。その中でもドイツでは340施設で11,630名の膝疾患患者を対象とした大規模研究を行い、鍼治療群と鍼治療をしない群との比較をしたところ、鍼治療は膝疾患に効果があることを証明しました。このように国を挙げて鍼治療の有効性を配信しています。
一方、東アジアを見てみますと、中国、韓国、日本が中心となると思います。経穴の位置の標準化などを行っていますが、それを証明した訳ではなく、相談して決めただけで意味をなさないと思います。
中国では国家戦略として中医学を世界に売り込もうとしています。
三国中で一番良い方向で行っているのが韓国だと見受けられます。方向としては医者になった上で、その後に東洋医学を修めたものを統合医として医者の上位に位置付けしようとしております。そのくらい高度なものとみなしてきております。
では、日本はどうでしょうか。WHOにおいても発言力が無いことから無視されているといっても過言ではないでしょう。
現在日本では統合医療について国内でも大きな動きがあり、厚生労働省が統合医療プロジェクトチームを発足させ、研究を推進しようとしております。しかしながら、鍼灸の現状や今までの研究を知っている方は少なく、鍼灸に対しての期待感や実態をつかみきれていないまま検討されている感が見受けられます。このままでは、EBM(科学的根拠に基づいた医療)が確立されていない現状や、鍼灸学校が乱立していることによるレベルの低い鍼灸師を見て、「鍼灸はこんなものかと」と飽きられてしまう非常に危険な状態にあります。よって、この(社)生体調整機構制御学会などの実績を知って頂く必要があります。
鍼灸界の現状を知り、世界に目を向け、情報を整理する。そして、真剣に鍼灸や鍼灸師のことを考え、一つになって良い方向に動いていかなければならないことを示唆されました。
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