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24時間血圧

平成22年3月号

(社)生体制御学会会長

中 村 弘 典

 

 平成19年8月まで「研究班紹介」と題して研究班の班長の先生より研究班の紹介を頂いておりましたが、9月より、メディアの医療情報の中で研究班に関係する記事がありましたら各班長にコメントを頂き、日頃の臨床に役立てて頂く目的で「生体制御学会NEWS」を発信させて頂きます。

 今回は『24時間血圧』について、生体制御学会研究部循環器疾患班長の服部輝男先生に以下のように解説して頂きました。

 

 

24時間血圧

 

生体制御学会研究部 循環器疾患班班長

服部 輝男

 

 時々刻々と変化する血圧に対応するため、いろいろな血圧測定が発表されてきました。水銀血圧計、デジタル血圧計、両側(2点)同時血圧計、4点同時血圧計、24時間血圧計というように長足な進歩をしてきました。

 そのなかで、私たち循環器疾患班では2点同時血圧計を使用し両側上腕同時血圧、上腕と足首の血圧(ABI)などの測定を行っています。

 近年多くの研究(大迫研究など)から24時間血圧が重要視されるようになってきました。この24時間血圧は、夜間寝ている間も昼間活動している間も血圧を約30分毎(或いは1時間毎)に24時間継続測定し、被検者の血圧値を把握しようとするものです。またこれを可能にしているものが携帯型の24時間自動血圧計(自由行動下血圧測定、ABPM)といわれる血圧計による血圧測定です。この測定(検査)により以下のようなことに役立ちます。

(1) 一般に血圧は昼間覚醒時より夜間睡眠時に低値を示すと言われております。しかし、低値を示さない場合や、逆に高値を示す場合があり、こうしたケースでは無症候性脳梗塞や心肥大(左室肥大)、蛋白尿などの高血圧性臓器障害を高率に伴うと言われており、こうした人々の発見に役立ちます。

(2) 白衣性高血圧の診断や発見に役立ちます。医療機関などで測った血圧は高く、自宅で測った血圧は低い値を示す場合を言います。白衣性高血圧の発見は過度な降圧治療を未然に防ぐことができます。

(3) 仮面高血圧の診断や発見に役立ちます。この高血圧は逆白衣性高血圧ともいわれ医療機関などで測った血圧は低いが、自宅で測った血圧が高い場合を言います。

 日常、高血圧状態が考えられますので脳血管疾患、心疾患あるいは腎疾患などのリスクが高くなります。

 以上述べたように、24時間血圧測定は被検者(患者)の血圧日内変動を把握することができ、致命的な循環器病発症リスク回避の観点から利点が多い方法ではないかと思われます。

 

参考文献

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(1998-1999年度合同研究班報告)

24時間血圧計の使用(ABPM)基準に関するガイドライン

http://www.cpt.med.tohoku.ac.jp/Ohasama.html

http://www.aandd.co.jp/adhome/products/me/ambulatory/index.html

http://www.kyotofuyaku.or.jp/kamenkouketuatu.htm