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自律神経反応の客観的評価

平成21年9月号

生体制御学会ホームページ委員長

河 瀬 美 之

 

 平成19年8月まで「研究班紹介」と題して研究班の班長の先生より研究班の紹介を頂いておりましたが、9月より、メディアの医療情報の中で研究班に関係する記事がありましたら各班長にコメントを頂き、日頃の臨床に役立てて頂く目的で「生体制御学会NEWS」を発信させて頂きます。

 今回は『自律神経反応の客観的評価』について、生体制御学会研究部情報・評価班班長の皆川宗徳先生に以下のように解説して頂きました。

 

 

自律神経反応の客観的評価

 

生体制御学会研究部 情報・評価班班長

皆川 宗徳

 

 黒野保三先生のご指導を頂き第27回(社)生体調整機構制御学会学術集会において「心拍変動解析による鍼刺激に対する自律神経反応の評価」と題して一般口演発表をさせて頂きました。

 鍼刺激に対する自律神経反応の客観的評価として、従来の心拍変動(heart rate variability,HRV)指標からは評価できない部分を、新しいHRV指標であるDC(deceleration capacity)で評価することができました。このDCに関しては、共同研究者の名古屋市立大学大学院医学研究科医学・医療教育学分野教授早野順一郎先生からご教授頂いたものであり、新しい心臓副交感神経の指標として注目されています。

 DCは、ドイツのアクセルバウアーらが「心筋梗塞後の死亡率予測因子としての心拍数の減速:コホート研究」の中でその有用性を論じています。

 内容は「心筋梗塞の生存症例において、除細動器の埋め込みにより死亡率が大きく低下することが無作為比較試験の結果により示されている。左室駆出率(LVEF)の低下の度合いがリスク予測に使用されているが、心筋梗塞後に最新治療、特に血行再建術を受けた対象者を任意抽出した際、大部分の死亡例で左室駆出率の低下が見られなかった。さらに正確なリスク予測法が必要とされている。

 心拍変動は、洞結節の心臓副交感神経及び交感神経修飾の両方に影響を受けていて、心臓副交感神経の活動が低下すると死亡リスクが高くなることが臨床研究の結果により示されている。

 アクセルバウアーらは、心拍変動を分析し、リズム調整の特徴について、心拍数の減速(deceieration)と加速(acceleration)に分けて調査した。心拍数の減速に関連した心拍変動が、加速に関連した心拍変動、既存の世界的に広く使用されている心拍変動指標及び左室駆出率(LVEF)より、心筋梗塞後の危険予測として有用であることを示した。」

 以上のように、心拍変動の減速に関連した心拍変動は、心臓副交感神経の指標であり、心筋梗塞患者の低リスク群の早期発見、危険予測、予防的介入に大きく関わるとしています。

 今後、黒野保三先生のご指導を頂き、新しい心臓副交感神経の指標を用いて、鍼灸の基礎的研究を進めて行きたいと思います。