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臨床鍼灸の客観化

平成21年2月号

生体制御学会ホームページ委員長

河 瀬 美 之

 

 平成19年8月まで「研究班紹介」と題して研究班の班長の先生より研究班の紹介を頂いておりましたが、9月より、メディアの医療情報の中で研究班に関係する記事がありましたら各班長にコメントを頂き、日頃の臨床に役立てて頂く目的で「生体制御学会NEWS」を発信させて頂きます。

 今回は『臨床鍼灸の客観化』と題して、生体制御学会研究部情報・評価班班長の皆川宗徳先生に以下のように解説して頂きました。

 

臨床鍼灸の客観化

 

生体制御学会研究部 情報・評価班班長

皆川 宗徳

 

 情報・評価班では、黒野保三先生が言われている「臨床鍼灸診療で得られる現象を正しく捉え、それを収集して、新しい臨床鍼灸医学理論を実証医学的に検証していく作業を積み重ねることが必要である。」を基本に研究活動をしています。

 昨年は、黒野保三先生から「臨床鍼灸の現場において、腹部の鍼刺激により、胃や腸の運動に変化があらわれることは臨床上経験されることであるが、その現象は実証医学的に明らかにされていない。腹部の鍼刺激で胃や腸の運動に変化があらわれる頻度を調べるだけでも価値がある。」とご指導を頂き、黒野保三先生のご指導の下、ニプロ株式会社と共同で、胃電図を半年間(平成20年6月~11月)鍼灸研究の目的で使用し、健康成人を対象に腹部への鍼刺激が胃運動に及ぼす影響を調べました。その結果を今年埼玉で開催される第58回(社)全日本鍼灸学会学術大会に発表させて頂きます。

 黒野保三先生が提唱されている「鍼灸治療の実証医学的研究基準」の中で、鍼灸治療における自他覚所見の推移を定量的に見出すスケールの作成が必要であると言われています。

 今回、研究で使用した胃電図は、胃運動を客観的に捉えるものであり、非侵襲的に胃の電気活動を定量的に体表から記録できます。

 このような客観的データーに基づいて、鍼灸の効果を実証医学的に証明できるよう今後、情報・評価班として活動していきたいと思います。