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第239回定例講習会

日時:平成21年3月1日  午前9時30分~午後4時

場所:名古屋市立大学医学部研究棟11F A講義室

内容

1)臨床鍼灸医学研究(支部指定研修B講座)

(社)全日本鍼灸学会参与   愛知地方会名誉会長  黒野保三 先生

「再生医学についてⅢ」

最近世の中が変革し喜ばしい時代が来た旨の説明が、約5000年前からの人類の歴史を交えて詳細な説明がなされた。

鍼灸は医療であると考えるグループと、金儲けの手段と考えるグループの二極化が進んでいる。さらに日本の鍼灸は世界と比べ資質(学識および研究など)の低下が懸念される旨の説明がなされた。

新聞報道を多数示され最新医学と医療行政についての説明がなされた。

昨日、一般社団法人生体調整機構制御学会の役員総会が開かれた旨の報告があり、新学会の役員が紹介され趣旨について詳細な説明がなされた。

鍼治療の有効性について論文や実験結果を示され詳細な説明がなされた。

(内容紹介)

 本年最初の講習会です。昨年の最後の講習会からわずか3ヶ月しかたっていませんが、この3ヶ月で世界が100年に一度という急変が起きました。このことから現況を説明いただきました。

 「大変な時代といわれますがある意味において喜ばしいこともあります。5000年前からならず者の世界がはじまり、特に第2次世界大戦後のアメリカではならず者が謳歌しており、それが現社会の不安定な状況を作り出したのは公然の事実であります。オバマ大統領の就任によって少しでもこの体勢の方向転換の可能性がみえたことは、非常に期待の持てるところです。日本人にはもともと持っている精神や心がありますので、それを中心に考えていくと世の中の状態もみえてきます。しかしながら、その観点から考えますと、現在の鍼灸の世界は不安定であります。

 鍼灸が二極化しており、鍼灸の免許が単なる商売の免許になっているという一面とそうではなく高度な医療として行っていくという一面があります。当然、高度な医療となるには高度な医学の裏づけが必要ですが、古典文学を医学だと錯覚してきた部分を否定できないでいます。これでは、世界の鍼灸が発展してきている中で、日本の鍼灸が取り残される大きな危険を含んでいます。この現状に対して愛知地方会ではすでに動き始めています。

 昨年の12月8日に生体調整機構制御学会の一般社団法人の認可がおりました。そして昨日、臨時役員総会が行われ、今後の方針を話し合いました。まず、この学会がなぜできあがったのかということですが、地方会をなくして大きな枠組みを作るということでしたが、それに伴って地方会がなくなることから、卒後の勉強の場の存続を求める声があがりました。そこで社会から認められる学会を作るべきという認識で学会設立を行いました。 この学会は完全にオープンな学会で誰でも参加できます。そのことには以下の理由もあります。

 この生体の調整機構は鍼灸の独壇場でした。しかしながら、この機構を制御するのは何も鍼灸のみではなく、いろいろな分野において可能なことがわかってきており、そこでどの方法で行ったらどこが鍼灸治療より良いか悪いかを検討できます。そのことによって医療に良い影響を与えるのみでなく、鍼灸の治療仮説の発展も期待できます。そのような学会の設立に対してはいろいろな大学の諸先生方の同意を得、たくさんの先生方に顧問、相談役や監事などをお引き受け頂きました。

 これは、いままでの愛知地方会の発展的改称であり、この一般社団法人生体調整機構制御学会が発展することが望ましいと考えます。この学会ではいままで鍼灸治療が医療でないと言われてきたものを医療にしていくということが責務であります。

 では具体的に何を行うかという時期にもう一度研究や勉強の方法をみてみましょう。鍼灸現象は未科学と言われています。しかしながら、自然現象には自然科学理論で説明できるもの、自然科学で計れない基礎理論によるものがあるためにその自然現象自体が正しいものか正しくないものかに大別しなければいけません。ですから、実際に鍼灸の臨床の現場で得られる膨大な現象を捉え集めることで、自然現象に対する仮説を立て、自然現象に対する仮説を検証する実験計画を立て、実験と結果を繰り返し正しい結果を出し、そこから考察する手続きをするのが研究であり、学会としての本質であります。」と教えていただきました。

 また、次回から各論に入る「再生医学について」を理解する基礎である、鍼の治療仮説について説明頂きました。

2)不定愁訴への対応(支部指定研修B講座)

たけうち心療内科院長 竹内 聡 先生

「④治療上の工夫」と題し、治療上の考え方や工夫について詳細な説明がなされた。

3)不定愁訴に対する基礎・臨床、診断と治療

愛知地方会幹事 山下喜代 先生

「-健康チェック表と月経困難症状質問表-」と題し健康チェック表と月経困難症状質問表を使用した臨床報告がなされた。

4)ホームページ作成について

愛知県鍼灸マッサージ師会会員  平瀬 徹 先生

「ホームページのアクセスアップ」と題しホームページへのアクセスアップ方法について詳細な説明がなされた。

5)不定愁訴に対する症例報告及び症例検討 

愛知地方会監事 石神龍代 先生

「不定愁訴に対する鍼治療の検討 ―パニック障害と思われる一症例―」と題して症例検討が行われ、活発な質疑応答があった。