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新型インフルエンザ対策について

平成20年11月号

生体制御学会ホームページ委員長

河 瀬 美 之

 

 平成19年8月まで「研究班紹介」と題して研究班の班長の先生より研究班の紹介を頂いておりましたが、9月より、メディアの医療情報の中で研究班に関係する記事がありましたら各班長にコメントを頂き、日頃の臨床に役立てて頂く目的で「生体制御学会NEWS」を発信させて頂きます。

 今回は『新型インフルエンザ対策について』と題して、生体制御学会研究部生体防御免疫疾患班班長の井島晴彦先生に以下のように解説して頂きました。

 

新型インフルエンザ対策について

 

生体制御学会研究部 生体防御免疫疾患班班長

井島 晴彦

 

 最近、新型インフルエンザのワクチンについて次のような報道がありました。

 「政府は平成20年9月18日、新型インフルエンザに備えたプレパンデミック(大流行前)ワクチンを接種する対象者の試案を公表した。対象は97業種の従事者で、優先順位で5段階に分類。総数は推計1000万~1500万人で、最も優先度の高い医師や救急隊員ら100万~200万人は来年度から接種を始める。政府は国民から意見募集してさらに試案を示し、年度内の確定を目指す。プレパンデミックワクチンは世界的に流行している高病原性鳥インフルエンザ(H5N1型)のウイルスから作り、新型インフルエンザを予防できる可能性がある。」

(平成20年9月18日 毎日新聞より)

 

 また、新型インフルエンザ流行時に備えてマスクの備蓄を促す、次のような報道がありました。

 「新型インフルエンザ流行時に、日常生活でマスクを使う際の基本的な考え方が、平成20年9月22日に開かれた厚生労働省の『新型インフルエンザ専門家会議』でほぼまとまった。不織布マスクを家庭で一人当たり20-25枚備蓄しておくことなどが推奨されている。  マスクは、フィルター部分でほこりや飛沫(ひまつ)などを捕捉することが期待される。インフルエンザウイルスの大きさは0.1μm(マイクロメートル、マイクロは100万分の1)と小さいが、通常は唾液など液体の飛沫と一緒に飛散する。飛沫の大きさは5μm程度で、一般的に市販されている不織布マスクで十分捕捉可能だという。  「基本的な考え方」では、咳・くしゃみなどの症状がある人が、やむを得ず外出する際、飛沫によって周囲に感染を拡大しないために、不織布マスクを用いることを推奨している。これを、「咳エチケット」の一部としている。  また、健康な人に対しては、人込みの中に行かない、手指を清潔に保つ、咳や発熱などの症状のある人の2m以内に近寄らない、などの感染予防策が優先すると強調。やむを得ず人込みに入らなければならない場合、ある程度の飛沫は捕捉できるため、一つの防御策とはなる。しかし、完全に捕捉することはできないため、人込みにいる時間をできるだけ短くするよう訴えている。  不織布マスクは使い捨てで再使用はできないため、新型インフルエンザ流行の前に家庭で備蓄しておくことを推奨。目安として、発症時の咳エチケット用に7-10枚(罹患期間7-10日)、健康時の外出用に16枚(週2回・8週間)を示し、一人当たり20-25枚、人数分の備蓄を勧めている。」

(平成20年9月22日 医療介護CBニュースより)

 

 上記2つの報道から、一般の方ができる新型インフルエンザに対する予防方法は少ない印象を受けます。そして、人間は新型インフルエンザに対する抗体を持っていないため、感染した場合の症状の重症化や、感染拡大が憂慮されます。

 生体防御免疫疾患班での様々な勉強を総合すると、現時点で予防について一番肝心で誰でもできることは、体の調子や免疫力を高めることだと考えます。規則正しい生活、適度な運動、偏らない食事をすることや、過剰なストレスを受けないこと、生活に笑いを取り入れることなどが重要です。

 また、鍼治療が風邪症候群の予防に役立つことを、生体防御免疫疾患班を代表して角村幸治先生が第54回(社)全日本鍼灸学会学術大会(福岡大会)で「鍼治療による風邪罹患回数の変化」と題して報告しています。この中では、鍼治療の継続期間が長い患者さんほど、風邪をひきにくくなったと感じていることが報告されています。  以上のような自然な方法で免疫力を高める努力をしたうえで、正しいうがいや、手洗い、マスクの着用を心がけることが必要だと考えます。  

 このような努力は、体調を良好に保ち、通常のインフルエンザの予防にも役立つと考えられるため、是非実行して頂きたいと思います。