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中リョウ穴刺鍼が不妊症患者の卵巣血流に及ぼす影響(京都大会)

東洋医学研究所®グループ 明生鍼灸院          

鈴木裕明、村中友香、深谷悠平、森誠一郎、南昌枝、渡邊由香、 辰巳千之、木津正義、 

竹内病院トヨタ不妊センター                  

俵 史子

明治鍼灸大学臨床鍼灸医学Ⅱ                

本城久司、北小路博司

 

【目的】

我々はこれまで不妊症患者に対し鍼治療を行い妊娠率の改善について検討し、第56回(社)全日本鍼灸学会学術大会では鍼治療が子宮血流へ及ぼす影響について報告した。しかしながら鍼治療の卵巣への効果機序について詳細は不明であった為、今回、鍼治療が不妊症患者の卵巣血流におよぼす影響について検討した。

【方法】

対象は竹内病院トヨタ不妊センターを受診し胚移植を2回以上行うも妊娠に至らなかった8名で、年齢31~40歳(平均35.3±3.5歳)、結婚歴38~102ヶ月(平均70±19ヶ月)、不妊歴18~84ヶ月(平均49±22ヶ月)、病院通院歴2~8年(平均3年)であった。血管抵抗の測定方法はLOGIQ400を用い経膣的にカラードップラー法にて左右卵巣周囲血管のPulsatility index(PI)Resistance index(RI)をそれぞれ測定した。鍼治療方法は中リョウ穴に直径0.3mm、長さ60mmの鍼を約50~60mm刺入し徒手的刺激を合計10分間行った。鍼治療は週1回間隔で月経2周期施行した。血流測定は、鍼治療期間開始前の月経周期3~7日目と鍼治療開始後2回目の月経周期3~7日目に再度行なった。

【結果】

鍼治療は7~15回(平均9.6回)で、右卵巣周囲血管PI値は2.24から2.58となり、左卵巣周囲血管PI値は2.43から2.13と左右共に有意な変化を示さなかった。また、右卵巣周囲血管RI値は0.84から0.85となり、左卵巣周囲血管RI値は0.88から0.82と左右共に有意な変化を示さなかった。

【考察と結語】

我々のこれまでの報告で中リョウ穴刺鍼が子宮の血流改善に関与したことは明らかとなったが、卵巣周囲血管に関してはPI値RI 値左右ともに有意な変化はみられなかった。以上のことより、卵巣血流においては今後更なる検討の必要性が示唆された。

 

キーワード:中リョウ穴、不妊症、卵巣周囲血管、 Pulsatility index 、Resistance index