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不妊症患者に対する鍼灸治療と流産率の検討2-35歳以上の流産率の検討-(京都大会)

東洋医学研究所®グループ 明生鍼灸院

木津正義、村中友香、深谷悠平、森誠一郎、南 昌枝、渡邊由香、辰巳千之、鈴木裕明

 

【はじめに】

高齢出産となる35歳以上では流産率が増加し、40歳代の高度生殖医療(以下 ART)では60%以上とする報告もある。今回、初診時に35歳以上の患者の妊娠経過を調査し、鍼灸治療と流産の関係を検討したので報告する。

【対象と方法】

1997~2006年までの10年間に来院し妊娠した患者553名中、経過が明らかな35歳以上の患者143名を対象とし、鍼灸治療後の初めての妊娠経過を出産群と流産群に分け比較検討を行った。また過去の流産・出産経験、妊娠方法、鍼灸治療頻度と流産の関係を検討した。鍼灸治療は証に基づいた本治法と標治法を行った。

【結 果】

出産群105名、流産群38名で流産率は26.6%であった。両群間には不妊歴、病院通院歴、鍼灸治療頻度に有意差はなく、初診時年齢(出産群:36.8±1.9歳、流産群:37.9±2.7歳、P=0.035)と妊娠時年齢(出産群:37.1±2.1歳、流産群:38.0±2.5歳、P=0.047)に有意差があり流産群が高い結果となった。初診時年齢は38歳未満(流産率:19.6%)と38歳以上(流産率:40.8%)の間に有意差(P=0.007)が認められ、初診時の年齢が高いと流産率は有意に高かった。過去の流産・出産経験、妊娠方法、鍼灸治療頻度と流産率との間には関連は認められなかった。一方、40歳代のART症例の流産率は41.2%であり、一般的な流産率と比較して低かった。

【考察および結語】

今回、初診時・妊娠時の年齢に有意差が認められ、初診時38歳を境に流産率が増加したことは、患者に流産のリスクを説明でき、早い段階での積極的な治療を勧める判断材料になる。高齢になるに従って流産率は増加し、鍼灸治療の頻度が多くても流産率を減少させることは難しい。しかし40歳代のART流産率が一般の流産率と比較して低かったことは、鍼灸治療が母体環境になんらかの影響を与えたのではないかと推察する。

 

キーワード:不妊症、流産、35歳以上、鍼灸治療