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不妊症患者に対する鍼灸治療と流産率の検討1-35歳未満の流産率の検討-(京都大会)

東洋医学研究所®グループ 明生鍼灸院        

渡邊由香、木津正義、村中友香、深谷悠平、森誠一郎、南 昌枝、辰巳千之、鈴木裕明

 

【はじめに】

我々はこれまで本学会にて不妊症に対する鍼灸治療の有用性を報告してきた。患者の目的は妊娠ではなく生児獲得であるが、妊娠出産適齢期である35歳未満でも15~20%が流産する。流産率は加齢と共に増加するため、年齢的要因を省く目的で初診時の年齢が35歳未満の患者を対象に妊娠の経過を調査し、鍼灸治療と流産の関係を検討したので報告する。

【対象と方法】

1997~2006年までの10年間に妊娠した患者553名中、経過が明らかな35歳未満の患者315名を対象とし、鍼灸治療後の初めての妊娠経過を出産群と流産群に分け比較検討を行った。また過去の流産・出産経験、妊娠方法、鍼灸治療頻度と流産の関係を検討した。鍼灸治療は証に基づいた本治法と標治法を行った。

【結 果】

出産群は261名、流産群は54名であり流産率は17.1%であった。両群間には初診時・妊娠時の年齢、不妊歴、病院通院歴に有意差はなく、鍼灸治療頻度は出産群が5.6±2.5回/月、流産群が4.8±1.5回/月と両群間に有意差(P=0.016)が認められ出産群が多い結果となった。過去の流産・出産経験、妊娠方法と流産の間には関連はみられなかった。また月6回以上鍼灸治療を行った患者(流産率:9.4%)と6回未満の患者(流産率:21.6%)の間には有意差(P=0.005)があり、35歳未満の患者において鍼灸治療頻度が多い症例は流産率が有意に低かった。

【考察および結語】

我々は患者に週2回の鍼灸治療を勧めている。しかし治療費、時間、距離等の理由により理想通りに通院できない患者も存在する。今回、鍼灸治療を月6回以上行うことで流産率減少の可能性が示唆されたことにより、最低限の治療頻度を患者に示すことができる。流産率の減少は妊娠という複雑な環境に鍼灸治療が影響を与え、特に血流および免疫系を介し母体を妊娠継続に適した環境に整えることができたためと考える。

 

キーワード:不妊症、流産、35歳未満、鍼灸治療