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不妊症患者における下部尿路症状と-不妊との関連性に関する検討-(京都大会)

東洋医学研究所®グループ 明生鍼灸院     

深谷悠平、木津正義、村中友香、渡邊由香、森誠一郎、南 昌枝、辰巳千之、鈴木裕明

明治国際医療大学 臨床鍼灸学          

本城久司、北小路博司

 

【はじめに】

子宮、卵巣、膀胱は骨盤内臓器であり、婦人科と泌尿器科は密接に関係性があるとされているが、下部尿路症状と不妊症との関連性について述べた報告はない。一方、我々はこれまで下部尿路症状に有用である中リョウ穴刺鍼が不妊症に対しても有用であることを報告しているが、その適応については明確な指標がない。そこで今回、不妊症患者の初診来院時における下部尿路症状と不妊症との関連性について検討したので報告する。

【対象と方法】

2006年6月~2007年6月の間に不妊症を主訴に来院した初診患者237名のうち、30~39歳の患者173名を対象とし、下部尿路症状を評価した。下部尿路症状はInternational Prostate Symptom Score (IPSS)を用いて評価し、合計点数(35点満点)が8点以上を有症状として評価した。また、2007年10月までの観察期間における鍼灸治療後の妊娠経過と下部尿路症状との関連性についても検討した。

【結果および考察】

173名のうちIPSSが8点以上の不妊症患者は20名(12.1%)あり、日本人健康女性の30歳代の有症状率である6~8%よりも多かった。本検討の観察期間において妊娠に至った症例は35例(20%)であり、初診時IPSSの平均点は妊娠群2.7点に対し非妊娠群は3.2点と非妊娠群に高い傾向がみられたが、両群間に有意差はなかった(p=0.57)。また、IPSSが8点以上の有症状患者は妊娠群が4例(11%)、非妊娠群が16例(12%)であり、8点未満の患者は妊娠群が31例(89%)、非妊娠群が122例(88%)であり下部尿路症状の有無と妊娠経過については統計学的に関連がみられなかった。このことから、中リョウ穴刺鍼の適応は下部尿路症状の有無に関わらず、妊娠経過が重要な適応基準であると考えられた。

【結語】

30歳代の不妊症患者において下部尿路症状の有無と妊娠経過との間に関連はなかったが、下部尿路症状の有症状率が高いことについては認識すべき必要があると考えられた。

 

キーワード:不妊症、下部尿路症状、中リョウ穴刺鍼