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不妊症患者おける月経症状の変化と妊娠の関係-月経障害指数表を用いた鍼灸治療の効果検討-(京都大会)

東洋医学研究所®グループ 明生鍼灸院        

南 昌枝、木津正義、村中友香、深谷悠平、森誠一郎、渡邊由香、辰巳千之、鈴木 裕明

 

【目的】

我々は第55回金沢大会において、月経障害指数表(以下:指数表)を用いて、器質的疾患の有無と月経症状の変化について報告した。今回は月経症状を訴える患者を対象に、鍼灸治療後の指数の推移を調査検討し、また、指数が妊娠に関係するか調査したので報告する。

【方法】

2006.6~2007.6までに当院に来院した不妊症新患250名の初診時における指数表(18項目、93点満点)が平均点(13.9点)以上かつ、鍼灸治療を月経3周期以上継続した41名を対象とした。指数表を来院時配布し、患者に月経初日から5日間記入させた。対象は鍼灸治療開始後、月経3周期41名、4周周期29名、5周期20名とした。鍼灸治療は証に基づいた本治法と標治法を行った。

【結果】

指数平均点:1周期目38.0±36.9(mean±SD)点、2周期目32.1±23.2点、3周期目21.7±16.8点、4周期目24.7±20.8点、5周期目24.7±18.5点であった。1周期目から2周期目は指数の減少に有意差はみられなかったが、1周期目から3周期目および4周期目、さらに5周期目との間に有意差がみられた。(p<0.01)初診時に指数が平均点以上の患者(111名)と平均点以下の患者(139名)の妊娠率は22.5%と19.4%であり、有意差がみられなかった。よって指数と妊娠には関連は認められなかった。

【考察と結語】

不妊症患者にとって月経は妊娠の失敗を意味し、程度に個人差があるものの身体的、精神的苦痛を増加させ、時にADLを低下させる。今回は指数が平均点以上の患者に鍼灸治療を行うことにより、指数の有意な減少がみられた。このことは、月経症状を有し、不妊症で悩む患者にとって継続して鍼灸治療を行うことが身体的、精神的ストレスの軽減に効果的であることを示している。また、初診時における月経症状の程度と妊娠率には関連が認められなかったことから、月経症状と関係なく妊娠する可能性があることを示している。

 

キーワード:月経障害指数調査表、不妊症、妊娠