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東洋医学研究所®グループにおける糖尿病患者の症例集積-不定愁訴カルテとの関係について-(京都大会)

東洋医学研究所®グループ

山田 篤,中村弘典,絹田 章,狩野義弘,黒野保三

 

【目的】

糖尿病は病態が進行すると様々な症状を発症させることから、不定愁訴についても発症し易い状態にあると考えられる。

そこで今回は、(社)全日本鍼灸学会研究委員会不定愁訴班黒野保三作成の不定愁訴カルテを使い、糖尿病患者の不定愁訴と血糖値について検討した。 

【方法】

対象は1999年10月から2007年11月の間に東洋医学研究所®グループにおいて2型糖尿病と思われる患者に対する鍼治療の症例報告9例(男性4人、女性5人、平均年齢67.4±10.7)で、不定愁訴カルテの重症度、層別分類、効果判定、不定愁訴項目、9症例中6症例の食後2時間血糖値について鍼治療22回目を最終時として検討した。

【結果】

重症度別では軽症2人、中等症7人、層別分類では自律神経失調性項目24%、神経症性項目16%、うつ状態性項目30%、その他の項目30%、効果判定は有効6人、比較的有効3人となった。不定愁訴項目では、最終時に減少している項目と殆ど変化していない項目があった。食後2時間血糖値は、最終時には有意な減少を認め、不定愁訴指数と食後2時間血糖値に相関が認められた。

【考察】

糖尿病患者は健常者よりもうつ状態になりやすい。今回の結果から、うつ状態性項目が他の層よりも多いことから、その傾向を見出すことができ、最終時にはうつ状態性項目が改善されていた。

また、糖尿病患者に多いと思われる「だるさ」や「下痢・便秘」の改善が高いことは、はり治療において特徴的なことだと思われた。

不定愁訴指数や食後2時間血糖値も最終時には有意に減少し、不定愁訴指数と食後2時間血糖値は相関していたことから、鍼治療により統合的制御機構を活性化がされ、糖尿病患者の不定愁訴不定愁訴や血糖コントロールが改善したと考えられ、鍼治療により、心身共に良い循環を生むことで糖尿病が改善されていくと思われた。

【結語】

糖尿病患者の不定愁訴を把握するために、不定愁訴カルテが有用だと思われた。

 

キーワード:糖尿病 鍼治療 不定愁訴 不定愁訴カルテ 症例集積