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第235回定例講習会

日時:平成20年4月6日  午前9時30分~午前10時30分

場所:名古屋市立大学医学部教育棟2F 第1講義室

本部報告として、(社)全日本鍼灸学会の組織改変について学会本部では地方会および現支部を廃止し大きく区分けしようとしている旨の説明があった。

 

1)臨床鍼灸医学研究

(社)全日本鍼灸学会参与   愛知地方会名誉会長  黒野保三 先生

 ① (社)全日本鍼灸学会設立の理念について詳細な説明があった。黒野保三先生は鍼灸界発展のために(社)全日本鍼灸学会設立に尽力し、名古屋から当時の文部省に何度も足を運び定款作成の折衝を重ね、地方会組織を認めていただいた経緯についての説明があった。

② 民主党が「統合医療を普及・促進する議員連盟の会」を立ち上げたことについて説明され、養成施設で3年間勉強し、国家資格たる免許を有し、開業権を認められた鍼灸師の身分につい て整理する必要性を説かれた。

③ 未科学の医療として発展しうるのは鍼灸であることを強調され、このことと鍼灸師自身が認識し研鑽することの重要性について説かれた。

(内容紹介)

 3月20日に(社)全日本鍼灸学会評議員会において地方会を廃止するという組織再編成の提案がなされ、評議員会で承認されました。これまでの経緯から現状の説明がありました。

 「(社)全日本鍼灸学会の定款は私が当時の文部省と交渉し、会の将来をにらんで作ったものであります。学会というものは、会員が研究し、その研究や発表の場であり、その発表した内容を論文として残すのが本来の姿です。そのことから考えますと、地方会は必要ないということでありますが、特にその当時においては他の医学会と違って卒後教育をして会員の資質を向上することが急務でした。そのため文部省との折衝を繰り返し、支部の存在と地方からの意見を反映させるための代議員制度となる評議員会の必要性を認めていただき、定款ができあがった経緯があります。

 現在、文部科学省から(社)全日本鍼灸学会に対し公益法人としていくために、地方会のお金の流れなどをすべて把握する義務を負うことからその責務を履行することが不可能である理由によって支部の再編成を強制するに至っております。しかしながら、このことが本当に会員のためになることでしょうか?疑問が残ります。

 愛知地方会では正しいことは正しい、間違ったことは間違ったこととして整理することを前提としております。そして、どこに行っても自分の意見を言えるようにしております。代表としていく人の意見は会の総意であり、会の看板を背負っております。しかしながら、意見が通らなかったといって大意にそむくことでは大儀にならないとも認識して行動しております。愛知地方会では勉強の必要性を認識しておりますので、このような場を今後とも継続していくつもりです。

 このようなご時勢において、現在大きな問題が起きております。超党派ならびに民主党において統合医療の普及や推進を目的とした議員連盟の会ができております。しかし、統合医療を本当の意味で理解して頂き、歴史的事実を認識した上で行って頂かないと、とんでもないことになります。国の予算を使って行う以上、医療財源を効率よく運用できるようにする、国民が本当にかかりたい医療にかかれるようにすることは最低限のことですが、日本の実情も考慮しなければ困ります。どうしても統合医療というとアメリカをみて行う場合が多いと思われますが、根本的にアメリカと日本では資格制度が違います。統合医療にはハーブ、アロマやアーユルベーダと鍼灸、按摩や柔道整復が含まれますが、国が養成機関を設けて国家試験を行っているものとそうでないものとでは同じ土俵で考えることは不可能なことであります。鍼灸医学には科学的根拠があります。

 しかしながら、鍼灸界がこの現実を受けて、それだけの違いがあることをアピールした時に鍼灸師のレベルが上がっていなかったら、統合医療の中での地位もなくなります。長年、愛知地方会として行ってきた勉強の意味と価値を理解し、今後どのような形となろうとも、勉強しない者が良くなるということはありえません。」と再度説かれ、指針を与えて下さいました。