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温熱療法を知って

平成20年4月号

生体制御学会ホームページ委員長

河 瀬 美 之

 

 平成19年8月まで「研究班紹介」と題して研究班の班長の先生より研究班の紹介を頂いておりましたが、9月より、メディアの医療情報の中で研究班に関係する記事がありましたら各班長にコメントを頂き、日頃の臨床に役立てて頂く目的で「生体制御学会NEWS」を発信させて頂きます。

 今回は『温熱療法を知って』について、生体制御学会研究部頭鍼療法班班長の田中法一先生に以下のように解説して頂きました。

 

温熱療法を知って

 

生体制御学会研究部 頭鍼療法班班長

田中 法一

 

 今回、伊藤要子先生(愛知医科大学医学部助教授・医学博士)の出版された本「HPSが病気を必ず治す」を読んで大変感動しました。特に“ 第十章 ガンと温熱療法最先端 ”に、こんな事が記されています。

 『 1℃の差が細胞の生死を決める・・・・・ガンの温熱療法の原理は、「温度」と「正常組織とガン組織の血管の違い」にあります。一般に、細胞は42℃以下では何時間加温してもほとんど死ぬことはありません。ところが43℃で加温すると、細胞はすぐに死んでしまいます。この1℃の差が細胞の生と死を分けます。

 それともう一つは、「血管構築の違い」です。本来、血管は温めれば広がり血流が増加します。ですから正常組織では、体に温熱を加えると、その熱は早くなった血液の流れですぐに運び去られてしまいます。つまり、正常組織を加温しても、その部分の温度はそれほど高くなる事はありません。しかし、ガン組織の血管は、どんどん増えるガン細胞に栄養を補給するため、ドンドン新しい血管が作られます。しかし、その血管は神経支配を受けておらず、未熟でぼろぼろの弱い血管です。その血管に温熱を加えても血管は広がらず血流も早くなりません、ですからガン組織に温熱を加えると熱は逃げられず、ガン組織にこもり温度は上がり43℃以上となるとガン細胞は死滅します。』

 以上のこと以外に、熱というショックを受けて細胞からつくられるタンパク質 「HSP」 (ヒート・ショック・プロテイン)が、最近、様々な病気やストレス障害から体を守り、又、老化や痴呆の予防、さらには運動能力までも向上させることが分かってきたと述べられていました。

 この事から、我々の温熱療法として灸法・温灸法を如何なる方法で施術に導入していくかと考えました。西洋医学での温熱療法は科学的装置で行われていますが、民間的には温浴療法とか入浴方法等で補助療法として応用するのも一つであります。但し、熱い温浴で長く浸かるなどと考えることには注意が必要です。例えば、脳血管障害や心臓疾患、腎透析患者等においては体内温度の上昇で血管に付加を与えると病態悪化の可能性が生じます。

 現在までに、がん患者には頭鍼療法(例えば、前立腺癌では定位区の足運感区左右と生殖区左右)に体鍼(ガン患部に対しての経絡治療)を併用した治療をしてきた班員の大半が同時に温灸法を治療に併用しています。その結果、がん患者の症状改善がみられています。その他の疾患においても頭鍼療法のみの治療に患部に温熱療法として温灸法を併用しています。

 今回の伊藤先生の学説では「ガン細胞が温熱(43℃以上)で死滅する」といわれている事から、鍼灸師としては、灸法の専門家として知識を充分に習得して取り組んでいきたいと思います。

 鍼灸医療によるガン撲滅の分野が広がっていけば明るさを感じ、そして、苦しむ多くのガン患者の克服への協力ができればと考えています。