平成20年2月号
生体制御学会ホームページ委員長
河 瀬 美 之
平成19年8月まで「研究班紹介」と題して研究班の班長の先生より研究班の紹介を頂いておりましたが、9月より、メディアの医療情報の中で研究班に関係する記事がありましたら各班長にコメントを頂き、日頃の臨床に役立てて頂く目的で「生体制御学会NEWS」を発信させて頂きます。
今回は『不妊症と鍼灸治療』について、生体制御学会研究部婦人科疾患班班長の鈴木裕明先生に以下のように解説して頂きました。
不妊症と鍼灸治療
生体制御学会研究部 婦人科疾患班班長
鈴木 裕明
2007年12月2日、ドイツのDer Spiegelのインターネット版に64歳の女性が女児を出産したと報じられました。2005年にはルーマニアで66歳、2006年にはスペインで67歳の女性がそれぞれ双子を出産しています。このような高齢での出産は当然自然には不可能です。何故かと言うとそれは通常50歳前後で卵巣が機能しなくなり閉経を迎えるため妊娠に必要な卵子が得られなくなるからです。これらの超高齢出産はすべて別の女性から提供してもらった卵子を使用した高度生殖医療(Assisted Reproductive Technology : ART)で妊娠に至っています。日本ではこのような卵子提供によるARTは認められていないため、何らかの理由があり卵子提供を受けなければ挙児が望めない場合、国外にて卵子提供を受ける必要があります。
卵巣機能の低下は加齢が主な原因です。いわゆる老化現象であるため最先端の医療をもってしても改善することはできません。卵子の質は一般的に35歳頃から低下が明らかとなり、40歳代では妊娠率は大きく低下します。最近では高齢出産のニュースを多く耳にします。このことは不妊に悩む女性にとって希望の持てる嬉しいニュースではありますが、すべての人が同年齢で妊娠できるというわけではないため、妊娠するためには卵子の質が低下する前に妊娠を望むことが大きなポイントになるのです。
昨今では様々な分野で男女の区別なく雇用され、女性の社会的地位も向上しました。そのことも少なからず女性の結婚適齢期を遅らせる一つの要因と考えられます。結婚適齢期を遅らせることで充実した生活を得られる反面、妊娠・出産適齢期を遅らせることはできないため挙児を望んでもすでに難しいケースもあります。卵巣機能を改善させることは難しいですが、着床や妊娠継続に関わる子宮の環境を整えることは可能です。
最近では、ARTでなかなか妊娠に至らなかった方が鍼灸治療を併用したことで妊娠に至る事ができたという話はめずらしくありません。挙児を望む人はまず御自分の身体を見つめ直すところから始めましょう。ストレスや運動不足などが原因で身体は実年齢よりも老けていることもあります。我々鍼灸師はそのような患者さんの身体が秘めている力を十分に発揮できるように治療しています。鍼灸治療が少しでも多くの方のお役に立つことが出来れば幸いです。