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うつ病と鍼治療

平成19年12月号

生体制御学会ホームページ委員長

河 瀬 美 之

 

 平成19年8月まで「研究班紹介」と題して研究班の班長の先生より研究班の紹介を頂いておりましたが、9月より、メディアの医療情報の中で研究班に関係する記事がありましたら各班長にコメントを頂き、日頃の臨床に役立てて頂く目的で「生体制御学会NEWS」を発信させて頂きます。

 今回は『うつ病と鍼治療』について、生体制御学会研究部不定愁訴班班長の石神龍代先生に以下のように解説して頂きました。

 

うつ病と鍼治療

 

生体制御学会研究部 不定愁訴班班長

石神龍代

 

 9月10日から16日まで、「世界自殺予防デー」にあわせて「自殺予防週間」が今年から始まりました。日本においては、1998年から自殺者が急増し、昨年までの9年連続3万人を越えているという現状であり、昨年、自殺対策基本法が成立し、政府によって今年の6月、自殺総合対策大綱が策定され、予防週間が設けられました。

 自殺者の3~6割がうつ病あるいはうつ状態だったのではないかといわれており、うつ病の早期発見・治療が重要課題となっています。日本では今現在、うつ病の人が200万から300万人くらいいるといわれており、また、約15人に1人が一生に1回はうつ病を経験するとされ、うつ病は誰にでも起こりうる病気であります。

 うつ病は、早期に発見し適切な治療を行えば8・9割が治るといわれています。現在最もよく使われているうつ病の診断基準はアメリカ精神医学会が作成したDSM-Ⅳ(ディー・エス・エム・フォー)であり、その治療の基本は「薬物療法」「環境療法」「精神療法」であり、回復には月の単位が必要であるとされています。

 (社)全日本鍼灸学会研究委員会不定愁訴班黒野保三班長作成の健康チェック表の50項目は、自律神経失調性、神経症性、うつ状態性、その他に層別されています。その中にうつ病のサインとみなされている項目が含まれていますので、来院患者さんに健康チェック表を記載していただくことによって、うつ病やうつ状態を早期に発見し、適切なアドバイスや治療が可能であります。

 うつ病に対する十分な知識を習得して、豊かな人間性と優れた技術による鍼治療は、うつ病の予防、症状の速やかな消失および寛解を目的とした急性期治療、あるいは再び状態が悪化することのないように寛解の持続を目的とした持続療法、及び再発予防を目的とした維持療法のどの段階においても、有用な治療方法だと思います