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非代償性肝硬変症に対する鍼治療の経過報告(岡山大会)

東洋医学研究所®グループ

服部輝男

 

【目的】非代償性肝硬変症と診断され、腹水の貯留、消化管出血、黄疸、肝性脳症などで入退院を繰り返していた患者に対する鍼治療に対して第52回大会に報告した。その後も鍼治療を継続し良好なQOLを保持し続けているので経過報告する。

【症例】患者:69歳、女性。現病歴:近医よりK病院に転院して汎血球減少、T.BiL、アンモニア値の上昇、コレステロールの減少などが見られ非代償性肝硬変症と診断された。治療方法:30mm16号ステンレスディスポ鍼を使用し単刺術及び置鍼術にて、生体の総合的統御系の活性化を目的とした太極療法(黒野式全身調整基本穴)と症状に随った局所療法に基づいた鍼治療を継続治療した。継続治療期間:平成14年11月28日より平成19年5月17日までの1622日間(1198回)。治療頻度:毎日とした。評価方法:血中アンモニア値、出血時間、プロトロンビンなどについて観察した。

【結果】血中アンモニア値は240~300μg/dlが104~200μg/dl程度で推移し、出血時間は正常範囲となり、プロトロンビンに関しても正常値を示している。

【考察】鍼治療の施術により、免疫機能や再生機能が賦活され、血中アンモニア値、出血時間、プロトロンビン濃度などがほぼ正常範囲となり、QOLの改善が確認できたことなどにより肝臓機能が回復しつつあると思われる。来院時69歳であった患者がすでに78歳の高齢となったが重篤な異常もなく長寿をまっとうできるものと思われる。

【結語】今まで、肝硬変症に対して有効な治療法がないとされてきたが、今回の非代償性肝硬変症に対する鍼治療により部分的かつ僅かではあるが治癒の方向に向かっていることが示唆された。

 

キーワード:肝硬変症,腹水,肝性脳症,血中アンモニア値,黒野式全身調整基本穴