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慢性疲労症候群に対する鍼治療の1症例(岡山大会)

東洋医学研究所®  

角村幸治 黒野保三

 

【目的】

慢性疲労症候群(以下CFSと略す)を発症し、就労が困難になった患者に対して鍼治療を行ったところ、復職が可能となった症例を報告する。

【症例】

29歳女性。主訴:疲れやすい。現病歴:平成15年9月より思い当たる原因がなく疲れやすくなり、血流改善の点滴などで平成16年の夏頃に症状が消失した。平成17年4月に就職し、5月に咽頭痛、微熱、体がだるい症状が出るがかぜと思い放っておいた。症状が続き8月になると体に力が入りにくくなり、10月にマラソン大会、学術発表、忘年会の幹事をこなしたが、11月には仕事をすることが困難になり、家の中を歩くのも困難になったため休職して12月5日に検査入院をするがさらに症状が悪化した。各種検査所見に異常が認められずCFSと診断された。平成18年1月13日に退院して家の中で歩けるようになるが復職したいので3月6日に東洋医学研究所Rに来院して鍼治療を開始した。鍼治療(太極療法)は平成18年3月6日~4月24日までの50日間(13回)行った。既往治療:メチコバール、シナール(ビタミン剤)。

【結果】

13回の治療で、CFSの程度を評価するperformance statusが初回時6度から4度に軽減し、初回時に訴えた咽頭痛、筋力低下、軽い労作後に24時間以上続く全身倦怠感が改善して寝付きの悪い日が減少した。また、鍼治療で体が楽になるが数日で戻ることを繰り返しながらも、症状の改善と共に散歩が出来る日が多くなり歩くペースも早くなった。50日間の鍼治療により復職が可能になった。

【考察・結語】

CFSは著しい全身倦怠感のため、社会生活からの離脱を余儀なくされることが多い。また、有効的な治療法が確立されていない疾患の1つである。本症例においても働く意志はあるものの全身倦怠感のために就労困難になり退職も考えていた。このような症例に対して、鍼治療を行うことにより種々の症状が改善されて復職が可能になったことにより、CFSに対する鍼治療の有効性が示唆された。

 

キーワード:慢性疲労症候群、鍼治療、全身倦怠感