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器質性月経困難症状に対する鍼治療の検討―アトピー性皮膚炎を伴う卵巣チョコレート嚢腫に対する1症例―(岡山大会)

東洋医学研究所®

○山下喜代、石神龍代、橋本高史、黒野保三

 

【目的】

子宮内膜症の発症機序は未だ明確にはなっていないが、最近では子宮内膜症とアレルギーとの関連も示唆されている。今回、幼児期よりアレルギー症状があり、月経周期に伴ってアトピー性皮膚炎の悪化をきたす患者に対して鍼治療を施したところ、月経困難症状およびアトピー性皮膚炎に改善がみられたので報告する。

【症例】

患者:29歳、女性、未婚。主訴:子宮内膜症による痛みと全身のだるさ。現病歴:平成14年左卵巣チョコレート嚢腫が発見され、翌年手術により病巣部を摘出したが3ヵ月後に再発した。平成16年中用量ピルの服用を開始。しかし、アトピー性皮膚炎の悪化により中止した。また、右卵巣チョコレート嚢腫も発見され、月経困難症状もひどくなり、月経時以外での下腹部の痛みもひどくなってきたため、同年12月、東洋医学研究所に来院した。治療方法:生体の総合的統御機構の活性化を目的とした太極療法(黒野式全身調整基本穴)を用いて単刺術にて行い、症状の推移を客観的にみる目的で不定愁訴カルテと月経困難症状質問表を用いた。

【結果】

42回の治療により、月経困難症状点数は37点から23点に減少した。中でも、患者が最も苦にしていた子宮内膜症による痛みが「日常生活に支障がない」「苦にならない」程度にまで改善した。また、アトピー性皮膚炎は、月経になっても悪化しなくなった。不定愁訴指数においては、初診時38点であったものが22回目来院時には27点と改善し、効果判定は比較的有効となった。

【考察・結語】

子宮内膜症は、異所性子宮内膜様組織を含めた子宮と卵巣を摘出しないかぎり完治せず、再発を繰り返すといわれている。このような疾患に対して、子宮内膜症自体を縮小することも大切だが、症状によって著しく障害されるQOLの改善も重要であると考えられ、今回鍼治療によって、月経時に「日常生活に支障がない」まで症状が改善したことは患者のQOLに大きく関与しているものと思われる。

 

キーワード:アトピー性皮膚炎、卵巣チョコレート嚢腫、太極療法(黒野式全身調整基本穴)、不定愁訴カルテ、月経困難症状質問表