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伝統医学的アンケートを用いた陰陽・虚実タイプ別分類の検討(岡山大会)

東洋医学研究所® 

米山 徹子  黒野 保三

 

【目的】

鍼灸医学には、古典でいう陰陽・虚実・気血等の調和が生理状態で、それが不調和になると疾病になるという概念がある。今回、東洋医学研究所R初診患者に対し伝統医学的アンケート(黒野保三作成)を行い陰陽・虚実に分類し、古典の思考と現代における生体現象との間に何等かの関連性がないかを検討したところ興味ある結果が得られたので報告する。

【対象と方法】

2001年3月22日~2006年11月30日に東洋医学研究所Rに来院し、伝統医学的アンケートを行った243名(男性112名、女性131名、平均年齢49.9±18.1歳)を対象とし、陰陽・虚実のタイプ別に分類した。

【結果】

年齢差はほとんどなかったが体格差がみられ、BMIは全体の平均が21.7に対し、陰タイプは20.4、陽タイプは22.4であった。男女差をみると、全体の女性の割合は53.9%、陰タイプは59.0%、陽タイプは50.8%と陰タイプに女性が多い傾向がみられた。また不定愁訴指数は全体の平均が18.7点に対し、陰タイプは25.2点、陽タイプは15.5点と差異が認められた。伝統医学的アンケート項目は、全体では「体がかたい」が最も多く、陰タイプは「不眠気味である、手足が冷たい、倦怠感がある」といった項目が、陽は「体がかたい、声が大きい、よく笑う」といった項目が多い結果となった。主訴は、陰陽の両タイプとも腰痛が最も多かったが、陰タイプは疲労やだるいといった症状があり、うつ、不眠などの不定愁訴が多いことも注目すべき点であった。陽タイプは腰痛、肩こり、頚部症状、膝痛といった整形外科的な疼痛などの訴えが多い傾向が認められた。

【考察・結語】

今回、陰陽・虚実のタイプ別によって体格、性別、不定愁訴指数、愁訴に違いが見られた。伝統学的アンケートを使用して伝統医学的な見地から体質を分類することにより、臨床において患者診断の一助となる可能性が示唆された。

 

【key word】 伝統医学的アンケート 陰陽虚実 愁訴 BMI 不定愁訴指数