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ART難治症例に対する鍼灸治療の臨床的検討(岡山大会)

東洋医学研究所®グループ 明生鍼灸院 

木津正義、村中友香、青木美鈴、片岡泰弘、高橋順子、鈴木裕明

明治鍼灸大学 臨床鍼灸医学II教室

本城久司、北小路博司

 

【目的】

我々はこれまで難治性不妊症に対する鍼灸治療の効果を検討してきた。今回高度生殖医療(以下ART)を複数回行うも妊娠に至らなかった難治症例に対し鍼灸治療を行い、鍼灸治療後の妊娠率の臨床的検討を行ったので報告する。

【対象と方法】

ARTを5回以上行うも妊娠に至らなかった難治性不妊症患者114例(年齢35.8歳、不妊歴76.4ヵ月)を対象とした。鍼灸治療は直径0.14mm~0.18mmの鍼(長さ30mm)を用いて関元、中極、大赫、血海、三陰交、腎兪、次?を基本穴として使用した。また、2005年4月以降、44例に対して直径0.3mm、長さ60mmの鍼を中?穴に刺入する仙骨部鍼刺激を併用した。

【結果と考察】

114例中49例(43.0%)が妊娠に至った。

妊娠経過は出産24例、妊娠中12例、流産9例、不明4例であり、7割以上が順調な経過であった。

妊娠群と非妊娠群とでは年齢がそれぞれ34.5歳と36.7歳であり非妊娠群が有意(p<0.01)に高く、40歳という年齢要因によって妊娠率に有意な差(p<0.001)がみられた。一方、不妊歴や不妊治療回数に有意差はみられなかった。妊娠方法は自然妊娠が4例(8.2%)にみられ、人工授精が1例(2.0%)、胚移植での妊娠が44例(89.8%)であった。その44例中30例(68.2%)は鍼灸治療後1回目の胚移植にて妊娠に至った。さらに、そのうち9例(30.0%)は10回以上ARTを経験していた非常に難治性の高い症例であった。以上のことから、鍼灸治療は難治症例の妊娠率を向上させる選択肢の一つとして有用である可能性が示唆された。

【結語】

ART難治症例に対して鍼灸治療は妊娠率向上に寄与すると考えられた。

 

キーワード:ART、不妊、鍼灸、仙骨部鍼刺激