東洋医学研究所®グループ
山田 篤、中村弘典、絹田 章、福田裕康、井島晴彦、皆川宗徳、黒野保三
【目的】
我が国における糖尿病は増加の一途をたどっている。また、糖尿病の合併症は患者のQOLを著しく低下させ、医療経済的にも大きな負担を社会に強いているため、糖尿病の増加を抑える必要がある。
こうした状況の中、我々は第54・55回(社)全日本鍼灸学会学術大会にて、東洋医学研究所Rグループにおける糖尿病に対する鍼治療の症例を集積し、血糖値と自覚症状を検討した結果、糖尿病のコントロール状態の改善に鍼治療が有効であることを報告してきた。
そこで今回は、糖尿病患者のQOLの低下に繋がると考えられる自覚症状と血糖値との相関から、糖尿病カルテの有用性について検討した。
【方法】
平成8年6月から平成18年2月までの東洋医学研究所Rグループにおける糖尿病に対する鍼治療の症例報告18例の中から、血糖値に関するデータと(社)全日本鍼灸学会愛知地方会研究部糖尿病班作製の糖尿病カルテによる自覚症状点数が記録されているもの(空腹時血糖値:9例、食後2時間血糖値:13例、HbA1C:8例)を対象とし、各血糖値と糖尿病カルテの自覚症状点数の相関を検討した。治療期間は鍼治療初診時(HbA1Cは鍼治療1ヵ月後)から約6ヵ月後を最終時とし、治療方法は総合的統御機構の活性化を目的とした太極療法(黒野式全身調整基本穴)を基本とした。
【結果
】空腹時血糖値と食後2時間血糖値共に糖尿病カルテの自覚症状点数との相関が認められた(p<0.05)が、HbA1Cと糖尿病カルテの自覚症状点数の相関は認められなかった。
【考察・結語】
血糖値と糖尿病カルテの自覚症状点数の相関が認められたことから、糖尿病カルテの自覚症状点数をチェックすることによって、糖尿病患者のコントロール状態を総合的に評価することができるものと思われ、糖尿病カルテの有用性が示唆された。
キーワード:糖尿病、血糖値、太極療法(黒野保三式全身調整基本穴)、糖尿病カルテ、QOL