· 

第229回定例講習会

日時:平成19年4月1日 午前9時30分~

場所:名古屋市立大学医学部基礎教育棟第一講義室

内容

1)臨床鍼灸医学研究

「医療としての鍼灸治療について」

「脳科学について」

(社)全日本鍼灸学会参与

愛知地方会名誉会長 黒野 保三

(内容紹介)

 わずか一ヶ月の間にはたくさんの情報が入ってきました。特に現在では社会全体が既存の感覚や知識ではこれからの発展はないことがわかってきました。特に鍼灸界では既存の感覚や知識にとらわれている感が強く、そういった現状では、これからの時代の変化の中では進化していけないという物事の根底に関わる内容を具体例をあげて説明していただきました。

 「自然治癒を科学するという内容が新聞に掲載されました。従来から鍼灸治療は自然治癒力を高めるといわれてきました。例えば今インフルエンザがたくさん発症してきていますが、対策として手洗い、うがい、ワクチンだけではおさまらないことが多々出現しています。元来西洋医学的には風邪は感染すると表現されてきましたが、東洋医学的には風邪をひくという表現が用いられてきました。西洋的には感染によってうつると言っているのに対して東洋的には自ら風邪を引き込む、つまり自らの体が中心に防御していくことで対処するということを説明しているのです。このように感染する点だけをとらえていると本質を見間違える可能性があるということです。

 この発想の転換や東洋の思想については、もう一つ情報がでてきました。既成概念にとらわれていては発展がないという事例ですが、現在の既成概念を作らされた社会情勢に西洋思想を支持する明治維新の政策がありました。文明開化の名の下に確かに経済的には世界に類をみない発展をみましたが、別の側面として東洋の精神文化を壊しました。これらの精神文化は高い次元で物事を発展させるためには必要であり、この哲学の重要性が身につくと独創性を作り上げることが出来きます。こういう観点で物事を行うと従来の既成概念から脱却できる大きな可能性になるであろうということです。

 また、現実として鍼灸界に厳しい状況も出てきています。従来からこの講義などで説明してきましたが、現実に鍼灸が未病システム学会から外されております。本当の意味では未病といえば東洋医学を行っている者なら誰でも知っていることであり、先ほどの風邪の話からも言えるように当然東洋医学が中心であってしかるべきであります。しかしながら、現実としてはずされていることを十分理解して既存の枠を撤廃していかなければならない。」と説かれました。

 次に、前回の講義の続きである脳科学について説明して頂きました。

 「以前に鍼治療を行った患者が再度治療にみえて治療を行った時、患者さんからやっぱり鍼治療で良くなると言われることがよくあります。今まで治療を受けたことがある患者との違いとは何であろうかということが疑問になります。これは記憶の問題になるはずです。まだ、現在ではすべて説明することはできませんが、非常に大事なことです。」と教えて頂き、鍼灸治療の現場で得られる現象を理解するための基礎となる、脳と記憶について講義頂きました。また脳の理解の基礎ともなる神経伝達の意味も教えて頂きました。