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お灸の秘話

平成19年3月1日

副会長 蟹江 勝

              

 鍼や灸は今から約千六百年ぐらい前に仏教と一緒に日本に伝えられたといわれ、その当時は僧が医師を兼ねていたのです。

 「医学天正記」によると、御陽成天皇が頭痛で困られてお灸をすすめられ、大徳寺の高僧が天皇にお灸をしたことが書き残されています。当時は高僧といえども直接天皇の御身体に手を触れることができないので、天皇が縁側の近くに出られ、外から紙の障子を少し破ってその穴からお灸をしたといいます。

 天皇が病気になられても直接脈を診ることができないので、手に糸をくくりそれを次の部屋にいる医師のところまで延ばし、脈を診たそうです。うそのような本当の話が残っています。果たしてこれで天皇の病気が治せたかどうかはわかりません。天皇もずいぶん不自由な時代でしたね。

 下って、江戸時代天保十五年、永代橋の架けかえ落成式に三河の小泉村の百姓、万平の一家三夫婦が揃って渡りぞめをしました。この三夫婦はこぞって百何才以上であったといわれ、当時としては大変な長寿者揃いでそのことが記録に残っています。当時、出生が定かでない時代としても信憑性は一理あるかもしれません。

 万平はその後、たびたび八代将軍吉宗公や十一代将軍家斉公などの慶びごとに召し出されています。

 お付の者に、長寿の秘法はと聞かれるたびに、「先祖代々欠かさず三里の灸治仕り候」ということで、この話はうそではないかと思われていましたが、名古屋の郷土史家森島市衛氏が近年古文書を発見して、それが伝説だけでなく史実であったと発表されております。

 皆様も、毎日三里のツボにお灸をすえて長寿にあやかりましょう。