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頸肩腕痛に対する鍼治療の検討-多施設によるVASと頚部神経根症治療成績判定基準の評価-(金沢大会)

愛知地方会研究部疼痛疾患班

加納俊弘、河瀬美之、石神龍代、皆川宗徳、黒野保三

 

【目的】

 今回、頸肩腕痛に対する鍼治療の有効性を実証医学的に検討する目的で、多施設で症例集積を行った結果を報告する。

【方法】

 平成16年6月から平成17年10月までの間に4施設に来院した主訴が頸肩腕痛の患者24例(女性13例、男性11例、平均年齢50.8±14.0歳)に対して太極療法(黒野式全身調整基本穴)と局所の鎮痛・血行改善を目的とした鍼治療を行った。頸肩腕痛の評価はvisual analogue scale(VAS)と頚部神経根症治療成績判定基準を使用して記録した。統計処理は愛知地方会研究部情報評価班協力によりMann-Whitney U検定にて評価した。

【結果】

 VASは初診時治療前(6~100)と治療後(0~94)で改善傾向にあり有意差(p<0.01)を認めた。また初診時治療前と平均治療回数7.5回の最終時治療前(0~96)でも有意差(p<0.01)を認めた。頚部神経根症治療成績判定基準においても

 初診時(平均13.9±4.5点)と最終時(平均15.8±3.2点)の合計点数に有意差(p<0.05)を認めた。

 VASにおいては治療直後に有意に減少するものと治療直後には変化が得られないが、治療回数を重ねることにより減少するものと様々であった。

【考察】

 頸肩腕痛には様々な病態があるが、今回はすべての病態を含めて検討した結果、VASと頚部神経根症治療成績判定基準により有意な改善が認められた。1回の鍼治療でVASが改善するものと継続して鍼治療を行って改善するものなど様々であるので、今後は鍼治療の有効性を実証医学的に見出していくために病態別の検討を行っていきたいと思う。

【結語】

 頸肩腕痛を主訴とする患者に対し多施設でVASと頚部神経根症治療成績判定基準を使用して症例集積を行った結果、初診時と最終時で有意な改善が認められた。