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アレルギー性鼻炎に対する鍼治療の検討-スギ花粉飛散期における鍼治療効果の検討-(金沢大会)

愛知地方会研究部生体防御免疫疾患班

東洋医学研究所® 

橋本高史、角田洋平、中村 覚、石神龍代、井島晴彦、中村弘典、河瀬美之、皆川宗徳、黒野保三

【目的】

 わが国における花粉症の罹患率は15~20%と云われ、花粉飛散期に生活の質が著しく障害されることが報告されている。

今回、東洋医学研究所®グループにおいて、花粉症に対する鍼治療の有効性を日本アレルギー性鼻炎QOL調査票(JRQLQ) No.1、2を用い検討したので報告する。

【方法】

 2005年1月から4月末までに東洋医学研究所®グループ6施設において、花粉症症状を訴えた患者25名(男性10名、女性15名。平均年齢49.4歳)を対象に、週1回以上の頻度で鍼治療(黒野式全身調整基本穴を用いた太極療法)を施し、JRQLQを用い、1回目調査時と、鍼治療7回終了後の2回目調査時を比較検討した。

【結果】

 JRQLQ No.1Ⅰ鼻・眼の症状、ⅡQOL項目、Ⅲ総括的状態、花粉症重症度を1回目調査時と2回目調査時で比較すると全体的に改善傾向が認められた。

 JRQLQ No.2鼻・眼以外の症状では、全体的に変化はなかった。

 花粉飛散量を比較すると2回目調査時に多い傾向にあった。

【考察】

 今回、JRQLQを用い花粉症に対する鍼治療の有効性を検討したところ、Ⅰ鼻・眼の症状に改善傾向が認められたため、ⅡQOL項目の戸外活動能と精神活動能に顕著な改善傾向が認められ、さらにⅢ総括的状態や花粉症重症度も改善傾向になったと考えられる。

 JRQLQ No.2鼻・眼以外の症状では、のど症状・鼻閉症状・全身症状に改善傾向が認められたが、口耳皮膚症状や睡眠症状に増加傾向が認められたため全体として変化がなかったと考えられる。

 これらの傾向は花粉飛散量が2回目調査時に多い傾向にあったことから、鍼治療により花粉の飛散量増加に伴う症状の重症化を防ぐ可能性が示唆された。

【結論】

 今回の調査から、鍼治療を施すことにより花粉症の症状を改善し、それに伴うQOLの低下を防ぐ可能性が示唆された。

また、花粉症に対する鍼治療効果を検討するスケールとして、JRQLQを使用することの有用性が示唆された。

 

キーワード:日本アレルギー性鼻炎QOL調査票(JRQLQ)、花粉症、鍼治療、太極療法(黒野式全身調整基本穴)