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本邦線維筋痛症の全国疫学調査報告‐特に治療実態とその治療効果について‐(金沢大会)

山梨県立看護大学短期大学部看護学科1)厚生労働省線維筋痛症調査研究班2)東洋医学研究所3)

松本美富士1,2)、黒野保三3)

 

【目的】

  線維筋痛症(FM)は欧米においては比較的頻度の高い原因不明のリウマチ性疾患であり、難治性で慢性に経過することより補完・代替療法を含むさまざまな治療がこれまで行われてきた。一方、本邦ではFMは比較的なじみのない病態であることより、その疫学像を含め治療実態などについてはまったく不明であった。2003年厚生労働省のFMに関する調査研究事業が開始され、われわれは本邦FM患者の実態調査を精力的に行ってきた。そこで今回、本邦FM患者の治療実態とその効果について自験例を含めて報告する。

【対象と方法】

  全国疫学調査の二次調査より得られた268例のFM患者の個人調査票より受療状況、治療内容、その臨床効果および臨床経過について解析を行った。また、自験FM症例についても同様の解析を行った。

【結果】

  全国疫学調査の結果、本邦FMの有病率はこれまで想定されていたほどまれな病態でなく、欧米の報告に近い有病率が推計され、比較的頻度の高いリウマチ性疾患である。FM患者は診断、治療を求めて医療機関のみならずさまざまな医療関連施設を受診していた。治療内容については87.5%が何らかの薬物療法を受け、31.7%が様々な非薬物療法を受けていた。その内容は運動療法を含むリハビリ、精神・心理療法、鍼灸療法、その他であった。FM患者の6.7%が鍼治療を受けており、担当医の評価による鍼治療の効果は60.0%であった。自験例の検討でも積極的に鍼治療を行い、高い有効性を確認しているが、治療効果にescape現象を認めるものがあった。今回の調査では鍼灸師による治療効果の評価は行われていない。

【まとめ】

  比較的頻度の高い難治性リウマチ性疾患であるFMの薬物療法には限界が認識されている。鍼灸治療を含めた非薬物療法の効果も期待されるところであり、FM患者のADL,QOL改善を目指して多施設共同の鍼治療の治験が実施され、鍼灸治療の新たな適応のためのエビデンスの確立が望まれる。