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鍼灸治療は体の機能を活性化する

平成17年9月1日

経理部長  甲田久士

              

 私達の鍼灸治療は皮膚に刺激を与えます。刺激の性質から、入力系として、圧刺激(鍼刺激)・熱化学刺激(灸刺激)のいずれにも反応するポリモーダル受容器が関与していると考えられます。この刺激の情報は、知覚神経(自由神経終末)を介して脊髄から脳に伝えられます。そして、動物実験からポリモーダル受容器は皮膚、筋肉や内臓にも存在していることが分かっています。

 このポリモーダル受容器は、刺激を察知した自由神経終末の先端から神経ペプチドを放出することが分かっています。この神経ペプチドは、血管の拡張、血球成分に働いて炎症作用(肥満細胞からヒスタミンの放出)や免疫作用(マクロファージの食作用又は好中球の走化性の活性化、Tリンパ球の増殖)に、血管以外の平滑筋の収縮や弛緩などの活動調整、また線維芽細胞や血管内皮細胞の活性にも関与するという効果器作用を引きおこします。

 皮膚は大きく分けて表皮と真皮に分かれます。真皮には血管、リンパ管、肥満細胞、マクロファージ、線維芽細胞が存在しているので、鍼灸刺激がポリモーダル受容器を興奮させ、これらに大いに作用を及ぼすことが考えられます。その1つの現象として、鍼灸刺激を皮膚に行うと発赤する現象は、ポリモーダル受容器の興奮による神経性炎症の現象と同様であると考えられています。

 鍼灸治療による血行改善、免疫作用活性化による機能亢進、内臓平滑筋の胃や腸の活動調節の背景には、このポリモーダル受容器が大きな役割を担っていると思われます。さらに線維芽細胞はその増殖により、膠原線維を産生し、エラスチンをつくり肌の弾力性を生み、コラーゲン(水分の保持と皮膚のしなやかさ)の産生に深く関わっていることから、健康な肌をつくり、潤いを保つことができます。

 以上のことから、鍼灸治療は体の機能を活性化することによって、体のバランスを調節し、その効果は予防から美容まで幅広い領域で期待できる方法でもあると考えます。