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腰痛に対する問診、理学的所見の重要性

平成17年7月1日

副会長  蟹江 勝

              

 鍼灸院に来院する患者さんの主訴には、腰痛疾患が少なくありません。医療機関で診察と治療を受けたが症状の経過が思わしくない患者さん、あるいは雑誌などで鍼灸のトピックスを眼にして来院した患者さんなどと多様です。

 福島県立医科大学整形外科の菊池臣一教授によれば、海外の診療ガイドラインでは、問診による病歴作成が一番大事だと言われています。なぜかと言うと、問診による病歴作成によってred flags(重篤な疾患)を示すサインを見逃すことがほとんどないからです。

 レントゲンは1ヶ月以上痛みが取れない時に撮るべきだと書かれています。逆に言うと、痛みが出てから1ヶ月間はレントゲンを撮らなくても、正しい問診による病歴作成が行われれば、診断を誤ったり、予後を悪くしたりすることはあまりありません。事実、椎間板ヘルニアに関して言えば、問診と理学的所見の評価でほぼ診断できることが多くの論文で証明されています。

 また問診と理学的所見の評価で何か危険信号と思われるところがあれば、専門医に紹介すべきです。ですが、最初は問診と理学的所見の評価で十分です。それから自分でこれは非特異的腰痛だと判断しても、1ヶ月以上続く痛みはやはり専門医による画像診断を受けた方がいいと思いますと述べています。

 鍼灸医療に携わる鍼灸師の一人一人が日常の診療において、問診と理学的検査を十分習得して、診療にあたる重要性をいみじくも問いかけております。腰痛を訴えている患者さんを安易な判断により、治療方針を遂行する姿勢などはつとに戒めなければなりません。診断がより正しければ治療経過も好ましい結果が期待できます。たとえ治療ができなくても対応が適切であれば医療人として納得出来えるかと思います。

 鍼灸師は医療人としての資質や、より深い人間性が求められます。社会のニーズに応えられる鍼灸師がより多く生まれることが、鍼灸師の社会的位置づけにも繋がっていきます。

 (社)全日本鍼灸学会愛知地方会定例講習会では、信頼される鍼灸師を目指して、ともに学びともに向上することを目的にしております。一人でも多くの鍼灸師、学生諸氏の参加を楽しみにしております。