· 

骨盤位に対する鍼灸治療-お灸の煙臭いを抑えた炭化艾を使用した試み-(福岡大会)

藤田保健衛生大学坂文種報徳會病院

○川瀬 馨 岩田 治郎 清水 洋二

 

【目的】

 弟51回全日本鍼灸学術大会に引き続き、今回は2001年5月から2004年4月までの3年間に42人(初産24人、経産18人)の骨盤位に対して鍼灸治療で骨盤位矯正を行った。その際、お灸の煙や臭いを抑えた炭化艾を使用して鍼灸治療を行った。それは艾が燃える時に煙が立ち上がり臭いが強く、それが臭う事で周囲に対する環境問題や臭いが衣服等全身に付着する事に対して違和感を与えない目的で試みた。今回の対象は年齢が21歳から37歳までである。なお妊娠27週から36週+4日までの妊産婦で、他に異常所見のない骨盤位である。

【方法】

 対象は骨盤位確認後1週間から2週間位矯正体操をしてもらい、それでも治らなかった症例である。治療穴は三陰交、至陰、湧泉を選び、三陰交には灸頭鍼で炭化艾「温暖」2壮、至陰と湧泉には粘着式の長生灸(微煙無臭)3壮を行った。灸頭鍼の鍼はスーパーディスポーザブル鍼で長さ38mm、直径0.20mmを使用した。両下腿に遠赤外線又は赤外線灯による照射も併用した。治療時間は約30分前後で治療回数は週に2回から3回の頻度で行った。

【結果】

 今回使用した炭化艾で矯正率が83.3%であった。妊娠27週から36週+4日までの間の42人中、35人(6分の5)が頭位にもどり、7人(6分の1)が矯正できなかった。又一度矯正できた妊産婦が再度骨盤位になり再治療にて矯正できた例が8件あった。

【考察と結語】

 これらの結果から、今回使用した炭化艾での鍼灸治療でも骨盤位矯正が有効であった。鍼灸治療をすることで腹部の緊張が軽減し、胎動が増加しており、子宮筋の弛緩と血行が促進され、子宮内の環境が整うことで自然治癒力を高めた結果が、自然に正常な胎位に戻るのではないかと考えられた。炭化艾は若干の臭いはあるが気にならないし、ほとんど煙が出ないので周囲に対して健康を守る立場から考えても良い方法と思う。

 

キーワード:骨盤位、矯正、灸頭鍼、長生灸