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睡眠障害に伴う不定愁訴に対する鍼治療の検討(福岡大会)

愛知地方会  東洋医学研究所®

○石神龍代、皆川宗徳、 井島晴彦、福田裕康,、 近藤利夫、 黒野保三

 

【目的】

睡眠障害を訴えて来院した患者に対して(社)全日本鍼灸学会研究委員会不定愁訴班黒野保三班長作成の不定愁訴カルテを使用して、睡眠障害に伴う不定愁訴に対する鍼治療の有効性を客観的に検討したところ、興味のある結果が得られたので報告する。

【方法】

睡眠障害を訴えて来院した患者6名(男3名・女3名、平均年齢43歳)に対して、生体の総合的統御機構の活性化を目的とした太極療法(黒野式全身調整基本穴)としての鍼治療(30mm18号ステンレス鍼にて毎日或いは隔日に単刺術)を施し、不定愁訴カルテを使用して経過観察を行った。

【結果】

6名の重症度判定は、中等症2名・重症4名であった。6名を合わせた初診時における不定愁訴項目の順位は、人から神経質だと思われていることがある、肩や首筋がこる、自分の健康のことが気になる、物事を急がなければならない時頭が混乱する、人から批判されるとすぐ心が乱れる、腰や背中が痛くなる、胃の具合が悪い、わずかなことが心配になる、寝つきがわるく眠ってもすぐ目をさましやすい、寝つきがよいが夜中や早朝に目をさましやすいであった。6名を合せた不定愁訴指数の平均は、初診時34.2点であったものが、最終時には13.3点となり、Kruskal-Wallis検定において5%以下で有意な減少を示した。各層別の減少率は、自律神経失調性項目が72.1%、神経症性項目が74.5%、うつ状態性項目が51.6%、その他の項目が46.7%であった。また、6名の不定指数減少率による効果判定は、著効1名、有効5名であった。

【考察・結語】

 睡眠障害には現代社会の様々なストレスによる生活のリズムの乱れや心の不安等が大きく関与していることが推測され、今回の集積結果においても神経症性項目・うつ状態性項目に訴えが多かった。今回睡眠障害に伴う不定愁訴が鍼治療により改善されることを実証医学的に証明することができた。

 

キーワード:睡眠障害、不定愁訴カルテ、鍼治療、太極療法(黒野式全身調整基本穴)