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円皮鍼の偽鍼についての検討(福岡大会)

1)適応症委員会 2)愛知地方会情報評価班

3)森ノ宮医療学園専門学校

  ○校條由紀1、2) 皆川宗徳2) 黒野保三2) 井上悦子1、3)

 

【目的】

適応症委員会は第52回全日本鍼灸学会学術大会でのワークショップ会場にて、聴衆を対象にセイリン社製パイオネックス0.6ミリの円皮鍼の偽鍼と実鍼の弁別実験を行い、偽円皮鍼と実円皮鍼が弁別困難であることを確認した。

今回、この結果の再現性について、対象を変えて検討した。また、0.9ミリの円皮鍼についても同様の結果が得られるかを調べた。

【方法】

コントローラーを1名(割付のみをして実験に参加しない)とした。実験の参加者は開業鍼灸師16名。2名を術者とし、被験者14名をランダム割付にて2群(偽鍼群と実鍼群)にわけた。インフォームドコンセントの後、術者、被験者ともにマスクされた二重マスクで、セイリン社製パイオネックス0.6ミリおよび0.9ミリの偽鍼または実鍼の円皮鍼について、製品の外観および手三里への貼付感について、偽鍼と実鍼のどちらと感じたかをアンケート用紙に記入させた。集計結果から尤度比を求め群間比較した。

【結果】

先に0.6ミリの実験を行った。割り付け結果はA 群8名、B群6名。被験者の結果は、0.6ミリの外観の尤度比が0.94。0.6ミリの貼付感の尤度比が1.12で両項目とも弁別困難であった。

0.9ミリの実験は、同様の方法でランダム割り付けをし、A 群8名、B群6名となった。被験者の結果は、0.9ミリの外観は、尤度比が1.34であり、偽鍼と実鍼の弁別困難であった。

0.9ミリの貼付感は、尤度比が0.00で明確に区別がついた。

術者の結果は0.6ミリ、0.9ミリとも外観については見分けることができないが、0.9ミリの貼付感については被験者の態度から実鍼を予測することができた。

【考察】

外観が弁別困難なのは、両長さとも円皮鍼の偽、実鍼の構造、色が同じでありかつ、同社の製品の保護シールが鍼先を隠した結果、験者、被験者ともに弁別しにくかったと考えた。

貼付感は、0.6ミリの保護シールが尖り、皮膚への接触時に痛覚と感じ、弁別を困難にしたと考えた。また、0.6ミリの偽鍼の切断面が皮膚に触れ、若干の痛覚が発現したと考えた。

  0.9ミリの貼付感が弁別可能なのは、実鍼は痛覚を伴う一方、保護シールの形状が平坦でありかつ、偽鍼に埋め込みの鍼柄がないため、錯覚となる貼付感覚が無い。

実験方法の問題点として、0.6ミリの実験を先にしたため、被験者が0.6ミリの皮膚感覚を学習し、0.9ミリと比較したおそれがある。

0.6ミリの偽鍼がプラセボ以上の機能を持つ可能性については、偽鍼の信頼性試験の前に行われた、古屋ら(2002 全日鍼)の、肩凝りに対して実鍼のほうが偽鍼より効果があった報告から実鍼有効を支持する結果になった。

【結語】

0.6 ミリの偽鍼と実鍼の弁別結果は再現性が得られた。0.6ミリの偽鍼は、プラセボとして十分機能していると言える。今回検討した0.9 ミリの偽鍼は、プラセボとしては機能しにくい。