トライデントスポーツ健康科学専門学校1)中和医療専門学校2)名古屋市立大学医学部3)佐藤病院アレルギー科4)
○中井さち子1・2),渡 仲三3),木俣 肇4)
【目的】
患者はアトピー性皮膚炎と診断され、長期にわたって西洋医学的治療を継続したが、症状の悪化が改善せず副作用も出てきた。鍼灸治療を実施し良好な効果が得られたので報告する。
【症例】
男性、52歳。初診、2003年10月。主訴:1.皮膚ソウ痒感 2.湿疹。
現病歴:幼少時より、皮膚科医院でアトピー性皮膚炎の診断を受け、副腎皮質ステロイド剤の内服や貼付を行うが、症状は進行し副作用も出た。鍼灸治療を希望して来院、同時に武田病院を受診した。
家族歴:母にアトピー性皮膚炎。
現症:皮膚ソウ痒感はひどく、眼瞼部の腫れ、全身の皮膚(顔面、頚、体、四肢、関節部)に湿潤性紅斑と肥厚、苔癬、乾燥、鱗屑、痂皮、血性滲出液を認め、下着にも付着し剥がれ出血も伴った。副作用による紫斑、色素異常、毛細血管拡張、創傷治癒遅延も認める。
血液検査所見:初診時IgE値 13,123 IU/ml。BUN値31.3 mg/dl。皮膚の細菌培養 黄色ブドウ球菌(+)。アレルギー抗原は、カモガヤ、スギ他。
東洋医学所見:風湿証、風熱証、脾虚証、(肝脾不和)。
鍼灸治療:曲池、血海、合谷、百会、太衝、太白、豊隆、陰陵泉、脾兪。時に温灸。
【結果】
経時的にIgE値の低下傾向が認められた。1年間の治療後、初診時の IgE値は、13,123 IU/mlが3,343 IU/mlに、BUN値は、31.3 mg/dl が18.73 mg/dl(正常値)に低下した。MRSAに抵抗性の黄色ブドウ球菌・皮膚ブドウ球菌(-)となった。皮膚の湿潤性紅班や苔癬、鱗屑、痂皮、乾燥、滲出液症状、皮膚ソウ痒感も改善した。
【考察・結語】
現代医学治療を継続するも、症状悪化や副作用がきつく、治療の維持が困難だった。鍼灸治療1回目で好転し始め、患者との信頼関係が築けたので、武田病院に検査受診し、投薬は患者の希望で中止。1年間の鍼灸治療後、症状の改善に効果があった。気血水の調整と毒物を解毒し、症状が改善されたものと考察した。
キーワード:アトピー性皮膚炎、鍼灸治療、IgE値、BUN値、皮膚細菌培養